【食べる科学実験】なぜ人はラーメン二郎に並ぶのか? 魅入られる謎を科学で解明

開店前から閉店まで延々と途切れることなく人が並ぶ謎のラーメン屋「ラーメン二郎」。その何がそれほど人を熱狂させるのか? 

川口友万| Photo by Tomokazu Kawaguchi|シリーズ:食べる科学実験

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人体実験か? ラーメン二郎が食べたい衝動

二郎
ジロリアンなら諳んじられる、ラーメン二郎の社訓。ニンニク入れますか?
【写真:川口友万】

「ニンニク入れますか?」

 コールという。追加注文だ。

 えーと入れてください、あと油マシで。

 何とかマシマシと言えば、量をアレンジしてもらえるのだ。それを「ヤサイマシマシアブラマシカラメニンニク!」「ヤサイニンニクカラメメンカタ!」とか、呪文のように言わなくてはジロリアンに鼻で笑われるらしい。

 私の頼み方では笑われるどころか、見下されるのだろう。このブタめ!

 しかし他の客も「野菜マシカラメで」「ニンニクいらないです、メンカタメで」と呪文というほどもない。みんなジロリアンに鼻で笑われたいらしい。

 丼に山盛りの野菜の上に野菜を載せ、さらに野菜を載せ、そこにスープ鍋の上澄みの、背脂の固まりが浮いたところをひしゃくでかけた。

 野菜が多すぎて丼からだらだらスープがこぼれている。それを上からギューッと押えつけて、店員が叫んだ。

「スープ捨てたよ!」

 スープ捨てたよって。しかも床に? 

 ハイ、おまちどう、と出されたそれはラーメンというか、食べ物? 野菜が多すぎ、ぶたがでかすぎ、脂が層を成し、麺は? 麺が見えない。

二郎
これでも“小ぶた”。見ただけでお腹いっぱい
【写真:川口友万】

 食べて後悔した。なんで油マシなんて頼んだんだ? 

 油が多いなんてものじゃなく、油のせいでスープに届かない。油でぎとぎとの野菜は噛んでも味がしない。油には味がないんだな、と無駄にわかって不愉快だ。

 黙々と食べ、食べながらだんだん朦朧とし、肉と油でくちゃくちゃになりながら汗を流した。おいしいんだかおいしくないんだか、臭いし。豚臭いし。麺がやたら太いし。

 食べ終わってものすごく疲れた。店を出た客が暗く黙っている理由がわかった。一度食べりゃ十分だ、肉も脂も半年は見たくもない……と帰ってすぐには思った。ところがだ。

 数日後である。急にまた食べたくなったのだ。むわっと豚の臭いが蘇えり、同時に沸き起こった焦燥感。

く、食いたい!

 なぜだ! なぜ食いたいのだ。うまくないぞ、むしろマズいぞ? なのに、なぜ? 

 ラーメン二郎は3度目からやみつきになると言われている。この妙な突き動かされる感じがそれか。わが身に起きたこの衝動、科学的に説明がつくのか?

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