【月刊ムー編集長 三上丈晴 VS と学会重鎮 皆神龍太郎】 最終回「ムーはオカルトではない、哲学である」 (全3回)
どっぷり理系のオカルティスト対談も最終回。月刊ムー編集長の三上丈晴氏とトンデモ本を批判的に楽しむ団体「と学会」の皆神龍太郎氏のビッグ対談!
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皆神龍太郎
疑似科学ウォッチャー。東京工業大学物理学科大学院修了。と学会運営委員。ASIOS会員。懐疑的組織JAPAN(Japan Anti-Pseudoscience Activities Network)の代表。最近では江戸時代にUFOが漂着した事件とされる『うつろ舟』事件の真相を解明し、注目された。
【写真:谷口雅彦】
三上:文系にはないと思うんだけど、物理って覚えること一番少ないの。教科書に書いてあることが、一番少ないのよ。
運動方程式覚えるでしょ、F=ma。でもね、それで問題は解けないの。
皆神:そうそう、ニュートン力学でよければ、究極的には一つしか式はない。。F=ma、ただ一個だけ。
それでこのマクロな世界は、ほぼ全部それで動いているというんだから。F=maが、ひたすら無限に展開していくのよ。
三上:問題解けっていわれてもひとっつも解けない。100点満点のテストで10点しかとれない。それがずっと続く。
ずーっとわからないわからないって考えてて、ある時、「はっ!! F=maだよ!!」って(笑)。
この瞬間に今までの問題が全部解ける。やったことない問題も全部解ける。仏陀の悟りってこういうことだと思う。
あのね、地平線が見える。「おおおお!! そういうことか!!」って。
皆神:文系の場合は、そういう「悟り」はあんまりないかもしれない。
三上:学力がね、量子化されてるの。勉強しててテストで10点20点30点40点60点80点100点っていうのはないの。もうダメダメダメダメダメ……で、あるときドーンと上がるの。10点から一気に100点になっちゃうの。
皆神:でも、そのドーンがいつ来るかはわからない。永久に来ないかもしれない。でも来ると一撃で解けるという瞬間があるわけ。
正確には計算しなきゃわからなくても、解答まで続いていく道程が、高見から一瞬のうちに見通せて、「これで解けた」って悟る瞬間がある。これはもう絶対に解けたって、わかる瞬間があるんだよね。
三上:グラフで言う「変曲点」。
皆神:ノーベル賞取材でスウェーデンに行ったことがあるんですけど、その時に日本人が受賞したが『小林・益川理論』という素粒子の理論。
益川先生にその時聞いたんですけど、素粒子について、ずーっと考えててどうにもわからなかった。煮詰まってしまってもうこれ以上考えるのを止めようと思っていたある日、風呂桶をまたいだ瞬間に気が付いたそうなんです。
それまで3つと言われていた素粒子の数を6つにすれば問題は解けるって。
正確には、すごく難しい方程式をずっと計算しなくちゃいけないんだけれども、風呂桶をまたいだ瞬時に計算する必要もなく「解けた」と分かったそうな。
素粒子を6つに増やすと数が増えた分だけ解の自由度が上がるから、その自由度の中にすべての回答を織り込めばいい、と瞬時に見抜けたらしい。
計算なんて後ですればいいだけ。「解けたね」「それは解けましたね」って、そういう瞬間が来ることがたしかにある。
三上:「頭良いってこういうことなんだ」っていう世界。こっちは解けなくて、うわーってなってるところに、サラサラサラっていう。もう神だよ神。拝んじゃうもん。
文系は良いのよ! 3、4年生になったらゼミ週1ぐらいでしょ? こちとら週3回実験だからね! 必修だからね。
皆神:ただしね、実験の場合、特にノーベル化学賞なんかほとんどがそうなんだけど、失敗した実験がノーベル賞につながっているの。
成功する実験は、もう世界中で誰かがやってる想定の範囲内のものでしょ。そうではなくて、失敗した実験について、なんで失敗したんだろうって考える。
ずっとそれを突き詰めた人間たちがいて、ある瞬間、「ユリイカ!」って叫ぶ。
三上:データをとる時に誤差が出るんだけど、誤差範囲だねって捨てちゃう。誤差の中にある時がある。
皆神:誤差の中にとびぬけて違う次元のものが存在している場合があるわけだよね。