サッカー・Jリーグを丸裸 統計学が突きつける、いびつなチャンピオン争いの実態

昨季より導入されたJリーグの2ステージ制。長く浸透した1ステージ制からの変更は大きな批判を呼んだ。統計学を用いた分析が、2ステージ制の実態を明らかにする。

山下祐司| Photo by Getty Images

スポンサーリンク

一貫性に欠ける現行の2ステージ制

 Jリーグがはじまった1993年から2014年、過去22年間のJ1の試合結果を現行の制度にあてはめ、その割合を調べると、CSに進めるチームが年間勝点の上位3チームのみになるケースは16回で【73】%。

 年間勝点の上位3チームと1stと2ndステージ優勝のどちらか一方が重なり、4チームによって争われるケースは5回で【23】%。年間勝点の上位3チームと1stと2ndステージ優勝のチームが重ならず5チームで争うケースはたったの1回で確率は【4%】だった。

「過去のデータを照らし合わせても、使えるのは22シーズンぶんの結果だけ。サンプル数が少ないため、データとしての信頼性は不十分です。J1リーグに参加するチーム数も変わってきました。

 実際に現行制度のCSが行われたのは1回。統計的な結論は出せません。しかし、コンピューター上でのシミュレーションなら10万シーズンも数十分で可能です」(小中准教授)

J
表 論文モデルに基づくシミュレーション結果

 
 実際の2013年の勝点、順位とシミュレーションした2013年の勝点、順位を比較したのが表(論文モデルに基づくシミュレーション結果)になる。

 分析結果からみえてきたのは年間勝点で3位までに入る強い3チームが1stと2ndステージも制する確率が非常に高いこと。

 そのため、1stと2ndステージの優勝チームが年間勝点で重複せずにCSに進出できるときは、各ステージの優勝チームがまるでワイルドカードでCSに出場したようにみえる。

 ワイルドカードとはメジャーリーグで採用されている制度で、大げさにいえば各地区を優勝せずにポストシーズンに進出できる「特別枠」のようなものだ。小中准教授はこう説明する。

「確率的に、おおむね年間勝点の上位3チームがCSを争う現行の制度を2ステージ制と呼ぶには乖離が大きい。これは、現行の2ステージ制を前提にしたCSに問題があるということです。

 各ステージの優勝チームと年間勝点の上位チームをCSで争わせるのは、別々の指標で評価したチームを戦わせていて、一貫性に欠けています」

1 2 3 4
PAGE TOP ↑