音楽を聞いたトマトは甘くなるのか?

モーツアルトをじっくり聞かせた作物は豊饒な実をたわわに実らせるという。おいおい、耳ないじゃん、耳。耳なし植物がいかにして音楽で成長力アップなのか?

川口友万| Photo by Tomokazu Kawaguchi

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どこが耳なのか? そもそもどっちが右か左か?

トマト
ミニトマトの鉢にスピーカ。マヌケである
【写真:川口友万】

 そういうわけで、ヘッドホンをミニトマトの鉢にかぶせてみた。

 どうもこうもない。バカみたいだ。だいたいスピーカの右と左はどうすればいいのか。右も左もわからないのに音楽だけわかるって、おまえはマイケル・ジャクソンか。

 何を聞かせる? 最初はモーツアルトと稲川淳二。

 『ホントに怖いから聞かない』を聞かせてみる。ホントに怖かったら嫌なので聞かなかったが、1週間してもあんまり変化がない。つまらない。

 マリリン・マンソンに変えてみた。ついでにモーツアルトを『シタールの調べ』に変えた。

 そもそものオリジナルはインド音楽、ラーガだ、ラーガ。しかし2週間で枯れるはずのミニトマトはますます元気。やはり21世紀のトマトは違う。種の頃からナチュラルボーンキラーズである。

 一方、シタール漬けのトマトは葉っぱが黄色くなってきた。ありゃ? なあにが悠久のインドだ。

 ラスト10日、ここは最強最悪のオジー・オズボーンしかない。しかも曲は『Suicide Solution』。和名、自殺志願。この曲を聞いてホントに自殺した少年がいて、両親がオジーを訴えた、それぐらいの曲だ。さあ死ね、すぐ死ね、真っ赤なトマトになっちゃいな!

 ……真っ赤なトマトがなってしまった。おかしい。どうしたことだ。

 インド音楽を聞かせたトマトが一番元気がなく、自殺で解決するはずのトマトは葉がモシャモシャだ。いや葉っぱはどうでもいい、味だ、実だ。その実はどうだ? あのトマトは酸っぱいか?

 それぞれ実をもいでブラインドテスト。嫁に食わせてみた。

トマト
手前からシタール、無音、オジー・オズボーンを聞かせた鉢。曲はエンドレスで聞かせた
【写真:川口友万】

 「皮が固いね、これ」

 はい、シタールトマトですね。

「まあまあ甘い。おいしいんじゃないの?」

 それは何も聞かせてないトマト。

「薄い……ボヤけた味ねえ」

 オジーだよ、それがオズボーンだよ!

 ではチェックしようかな。これは普通だ……聞かせてないやつね。これは……普通だよ。シタール? へえ~。じゃあ最後は……酸っぱいな。これ、オジー? 別に味薄くないな。俺が変なのか? 嫁が腕を組んで言い切った。

「何も聞かせないのが一番おいしい」

 まあ……そういうことだが。

「音楽を聞かせて育てるんでしょ? 音楽聞かせるぐらい気を使って育てるんだから、そうやって苗をケアしてやることが大切なんじゃないかな」

トマト
みんな元気に育ってしまいましたとさ
【写真:川口友万】

 うまいことまとめるね、キミ。

 植物が振動を探知し、その個体の必要な振動数が与えられると生理活性を示すというのが音波栽培だ。

 これはしかし、あらゆるものには波動があり、その波動を与えることで心身は健康になるという屁理屈と何も変わらない。

 オジギソウがオジキしなかったダーウィンの実験を私は信じる。

 むしろ残った謎は演歌ではないか? 烏骨鶏はこぶしがイヤなのか? 居酒屋で飼うと烏骨鶏はどうなるのか、氷川きよしと前川清はどっちもアウトか、そういうことをいつか調べてみたい。

取材・文 川口 友万

【了】

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