科学俳句一覧

俳人:北大路翼(きたおおじつばさ)
1978年横浜生まれ。
幼少時より俳句に親しむ。
現在「歌舞伎町俳句一家 屍派」を立ち上げ後進を育成。
アートサロン「砂の城」城主。句集に『天使の涎』、共著に『新撰21』

戦乱の遺伝子を嗣ぎ雛笑ふ

子供の頃はお雛様が怖かった。お雛様が飾られている部屋もたいてい薄暗い部屋だったりする。闇に浮かび上がる無表情な白い顔。笑顔というのには少し悲しい。お雛様の様もどこか近づきがたい感じがする。思えば女性恐怖はこの頃に植え付けられているのかも知れない。

大試験水兵リーベ僕の船

ただただテストのために覚えさせられた元素記号の周期表。当時は気にならなかったが、なんて時代がかった語呂合わせなのだろう。水兵の兵もリーベというドイツ語も、軍隊の号令みたいだ。ちょっとエッチな水素さん、みたいにポップな語呂にすればいいのに。

実験をするのは一人冬日差す

理科の授業では、実験の器材の数が限られている。数名の班にわけられ、各班にあてがわれる器材はワンセットのみ。みんな早く実験を始めたいのに、先生の長い説明が続いている。そしていざ実験の段階になっても、器材に触れられるのは班でただ一人。窓から差し込んでくる冬日が見ているものの羨望のようだ。

蜜柑剥きノーベル賞の知らせ受く

本当の科学者は結果よりも、実験そのものが好きなのだと思う。栄誉のための実験なんてクソくらえだ。休みの日に炬燵で蜜柑を剥いているときにふいに届く受賞の知らせ。手紙にはうっすらと蜜柑の黄色が染みている。賞も受賞者も、このようなものであって欲しい。

1 2
俳句

PAGE TOP ↑