【変わる覚せい剤使用者】第1回 反社会から一般へ 覚せい剤乱用者の現在(全3回) 

覚せい剤で逮捕された元プロ野球選手・清原和博。彼のような刺青や派手な格好、「いかにも」と思わせる姿から覚せい剤使用者をイメージすると現実を見誤る。

山下祐司| Photo by Getty Images Yuji Yamashita|シリーズ:変わる覚せい剤使用者

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見た目は“普通” 最近の使用者の傾向

覚せい剤
失ったものは計り知れない……
【写真:Getty Images】

 高校球児として甲子園で最多の通算13本塁打を記録し、西武ライオンズなどで大活躍した元プロ野球選手の清原和博は別の意味で「記憶と記録」に残ることになった。

 もちろん、2月2日の覚せい剤所持での逮捕、そして23日の使用容疑での再逮捕によってだ。

 その覚せい剤の利用者が変化している。埼玉県精神医療センターで覚せい剤使用者の治療を行う合川勇三医師は話す。

「最近の覚せい剤乱用者はほとんど見た目が普通の人ばかりです。昔なら派手だったり、特徴のある服装で来院する典型的な人が多かったのですが、いまの患者は普通の格好で病院に来ます。一見しただけでは区別がつきません」

 白いスーツとサングラスを身につけた派手な格好でキャンプを訪ね、体に刺青を入れた清原のように、わかりやすい“ワル”をイメージさせる人は少なくなっているという。

 今は第3次覚せい剤乱用期とよばれている。覚せい剤取り締まり法で検挙された人数はここ10年ほどほぼ横ばいで、毎年1万1千~2千人ほど。

 長期的にみれば、減少傾向にある。第1次覚せい剤乱用期は、戦後の混乱を背景にヒロポンの愛称で普及した1945~1957年で、その検挙数は1年で5万5千人を超えた。

 第2次覚せい剤乱用期は高度経済成長で経済力をつけた1970~1994年。このときにピークは1984年の2万4372人にのぼった。

 この2次乱用時期と1995年から現在までの、3次乱用期の青少年や若い世代を中心とする患者、179名を調査し分析したのが合川医師だ。2012年に『日本アルコール・薬物医学会雑誌』に発表した研究をもとに合川医師が説明する。

「第3次乱用期になると最終学歴が中卒の割合が減って、短期大学や大学に入学した人たちの割合が10%から24.6%まで上昇しています。

 暴力団や反社会勢力との関わりを持つ人が48.2%から13.4%まで大きく低下し、服役の経験がない人も増えています。覚せい剤で逮捕されている人数はほぼ横ばいなので、学歴もある一般の人が増えていると考えられます」

 最近では歌手グループのチャゲ&飛鳥のASKAや女優の酒井法子が捕まり、芸能界では“定期的”に顔をのぞかせる覚せい剤。

 プロ野球界でも往年の名投手、江夏豊が過去に覚醒剤所持で実刑を受けている。一昔前まではそれこそ芸能界のような華やかな舞台をのぞけば、反社会勢力が使うのが“相場”だった。しかし、社会の変化とともにその内実も変わってきた。

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