脳の大きさと知性の高さは関連する ~ワイオミング大学の研究から判明~
脳の大きさが問題解決能力に影響を与えていることがある研究から判明した。体の大きさに比べ脳が大きい哺乳類ほど知能が高いという。
スポンサーリンク「頭が大きいと脳も大きい」というのは、よくいわれる話ではないだろうか。そして脳が大きいほど知性が高いとも。
動物の世界でも同様に考えられており、一般に身体が大きい動物ほど脳も大きい。しかしイルカのように身体のサイズに比べ脳が大きい動物もいれば、カバやシロナガスクジラのように、身体が大きいわりに脳が小さい動物も存在し、知性と脳の大きさの議論はつきない。
そこでワイオミング大学のサラ・ベンソン-アムラム氏を中心とする研究者チームが、脳の大きさと問題解決能力の関連性を調べるため、北米の複数の動物園で飼育されている39種、140匹の哺乳類を対象に実験を行った。
研究結果は1月発行の「米国科学アカデミー紀要」に掲載された。
問題解決能力は、餌を獲得できるかどうかで調べている。実験では細工を施した箱に餌を入れ、動物たちの様子を観察する。
動物たちから中の餌は見えるようになっているが、掛け金を外してふたを開けないと、餌を食べることはできない。餌はレッサーパンダには笹の葉、ハイエナには肉といったように、それぞれの動物が好むものが選ばれた。
動物たちには30分という制限時間が与えられた。クマ科の動物、カワウソ、アナグマ、アライグマ、クズリなどは、掛け金を外す、箱をひっくり返すなどして、中の餌を取り出すことに成功した。しかしマングースなどは最後まで箱を開くことができなかった。
実験の結果、研究者らは「身体の大きさに対し脳の占める比率が高い(=脳が大きい)動物ほど、問題解決能力が高い」と結論づけた。
さらに研究者らは一部の動物に対し、社会や集団が問題解決能力に影響を与えるかどうかを調べた。
社会生活の中で課題に直面し、それを解決することで、知性が発達するという説を調べるためである。この実験では集団におけるほかの動物との関わりや個々の役割なども追跡調査した。
しかし動物の社会生活と問題解決能力の間には、関連性を見つけることはできなかった。
研究者らはまた、前足の器用さと問題解決能力の高さに相関性があるかどうかも調べた。
つまり前足を器用に動かすことができる動物のほうが、問題解決能力が高いかどうかということだ。しかしこの調査でも、相関性を見つけることはできなかった。
こうした結果から、身体に占める脳の比重が問題解決能力にはもっとも影響するとの結論が導かれた、としている。
筆者が気になるのは、同じ種の動物で、若干でも脳の大きさに違いがある場合、能力に差が生じるかどうかということだ。
当然ながら人間でも同じなのか気になるところである。
参考動画リンク:「Brain size predicts problem-solving ability in mammalian carnivores」
取材・文 岡 真由美
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