【『決してマネしないでください。』完結記念インタビュー】第2回 天才は100年経ってもまだ天才(全3回)
理系のややこしい話を笑って学べるコメディマンガ『決してマネしないでください。』(講談社)。作者の蛇蔵先生に制作の裏話を聞く。
スポンサーリンク天才はいつも変なのだった
毎回、科学者の伝記に準じた話が出てきますが、あれは科学者伝記シリーズみたいな本があったんですか?
「ないです。毎回、最低でもその人に関する本を5冊は読んで、落としどころを決めていました。ニュートンやアインシュタインはたくさん本があるんですが、シュレーディンガーがなくて、論文探したりして大変でした」
不確定性原理のシュレーディンガーですね。
「一番最初は、科学史の先生にこの人を調べたら面白いんじゃないか? という科学者を挙げていただいて、その人たちを調べていくうちに横のつながりで、この人を調べたらこの人も面白い、みたいに候補がどんどん挙がっていきましたね」
作品中では登場しなかったが、ユークリッド幾何学で知られるユークリッドも、紹介したかったという。
幾何学の人と思われがちだが、有名な『ユークリッド原論』では幾何学にとらわれず、数学を包括的に扱っていた。
「ユークリッドと言えば幾何学と思う人が、読者にどのくらいいるのかわからなくて。保留にしました」
登場した科学者のうちで、ご自身が気に入った人物はいらっしゃいましたか?
「ニュートンですね。ニュートンはキャラクターが立っている! 偉大なるニュートンが心の狭いキャラクターだと描けて良かったですね」
使わなかった科学者はいるんです?
「ガロアとか。ガロア理論は量子論やコンピュータ理論に活かされている、画期的なものだったんですが、それを書いたのが10代の時で。ガロアは決闘で死んでいるんですよ。
婚約者のいる女性に横恋慕して、婚約者と決闘して、銃で撃たれて死んでいます、たった20歳で。悲劇的な人ですね」
他にも数学者のラマヌジャンを取り上げるつもりだった。
「この人は数学以外のことができなかったので、大学に入学するものの中退、独学で数学の勉強をしていた人です。なんのせ証明ができなくて、突然、解答にたどり着くという」
天才ってそういうものですかね。
「彼は厳格なベジタリアンだったんですが、第一次世界大戦の時に留学先のイギリスで野菜がなくなってしまい、亡くなってしまった。
彼が亡くなった後、彼の残した定理を証明するのに、数学者が寄ってたかって100年かかっています」
野菜がなければ、肉を食べればいいじゃない! そういうものではないんだろうな。
取材・文 川口 友万
【第3回に続く】