脳を作り出す ヒューマンブレインプロジェクト

ヒューマンブレインプロジェクト=HBPは脳の構造を分子レベルまで解き明かし、コンピュータ上に脳のシミュレーターを作ろうという国際プロジェクトだ。

川口友万| Photo by hbp

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コンピュータ上に脳を作り出す

hbp
画像はHBPのロゴとイメージ図
【The Human Brain Project (HBP)】

 HBPは世界約130の大学が参加するビッグサイエンスで、目的は2つ。

 1つは脳の精緻なシュミレーターを作ることで、脳疾患に関する新薬の開発を推し進めること。先進国の高齢化が進む中、アルツハイマーなど加齢に伴って発症する脳疾患用の新薬開発が急がれるが、そのためにシュミレーターは大きく役立つ。もうひとつは次世代コンピュータの開発だ。

 コンピュータと人間の脳は似ているようで、まったく違う。コンピュータは情報に応じて電子回路が変化することはない。

 ソフトウェアによってハードウェアの使い方は変わるが、回路自体が変化することはない。脳の場合、刺激や環境によって神経細胞が成長し、分岐して新しい神経ネットワークを作り出す。

 脳にとって神経細胞というハードウェアと記憶や思考といったソフトウェアは同じものだ。もっと違うのは情報処理の方法だ。脳の情報処理能力はスーパーコンピュータの比ではない。

 2013年8月2日、日本の理化学研究所とドイツ・ユーリッヒ研究所が共同で、スーパーコンピュータ『京』を使って、世界最大の脳神経のシュミレーターの作成に成功した。HBPの一環として行われた実験で、成果はHBPにフィードバックされる。

 京に搭載された約70万個のCPUを使い、17億3,000万個の神経細胞が10兆4,000億個のシナプスで結合された神経回路のモデルを作り、シミュレーションを行った。

 この神経回路を生き物の脳のサイズに換算すると、マーモセットなどの原猿類の脳に相当する。人間の脳に比較すると容量の1%程度だ。

 シュミレーションの結果、世界最高峰のスーパーコンピュータ(京は8,162兆回の浮動小数点演算を行える)を持ってしても、生物が1秒間に興奮させる神経細胞ネットワークをシュミレーションするには40分が必要だった。脳の情報処理速度はスーパーコンピュータは3桁以上上回っている。

 にもかかわらず、脳が必要とするエネルギーはとても少ない。1日400キロカロリー、電気に換算すれば20ワット電球をともす程度だ。

 京の消費電力は12.65989MW(2011年11月時点)。これは一般的な家庭の消費電力3万世帯分に相当するという。スーパーコンピュータはとんでもない大飯食らいなのだ。

 HBPでは、コンピュータとは根本的に異なる脳の仕組みを知ることで、今のコンピュータの限界を超えることが期待されているわけだ。

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