脳を作り出す ヒューマンブレインプロジェクト

ヒューマンブレインプロジェクト=HBPは脳の構造を分子レベルまで解き明かし、コンピュータ上に脳のシミュレーターを作ろうという国際プロジェクトだ。

川口友万| Photo by hbp

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超AIの誕生、自分をネットワークに転送する

 コンピュータの能力が今の1000倍に達するのは、意外に早く、2020年頃になると予想されている。

 そのレベルのコンピュータがあれば、ネズミの脳レベルのシュミレーターはできるのではないか? と考えられている。

 京で作ったのは神経回路のモデルだけだが、本物のネズミの脳のように器官や組織に神経系を分けた、文字どおりの脳シュミレーターである。

 ネズミの脳の神経細胞はおよそ2億個。対して人間は890億個である。今の1000倍も速いコンピュータでも、バーチャルな脳を作るには能力が足りないのだ。

 そこでネズミの脳シュミレーターができた段階で、その技術をコンピュータに応用することになるだろう。なぜ脳が驚くほどの低消費電力で驚異的な演算速度を実現しているのかが、脳シュミレーターを使えばわかるだろうからだ。


A Simulated Mouse Brain in a Virtual Mouse Body HBP

 脳神経のメカニズムを模したコンピュータは“ニューロモルフィック・コンピューター” (神経模倣コンピュータ)と呼ばれ、すでにニューロモルフィックな半導体を製作する別プロジェクトが動き出している。

 人間の脳のような複雑なネットワークを設計するには、人間では不可能であり、HBPでは神経細胞に見立てられた自律型のプログラムが神経ネットワークを構成していくことになる。プログラムが作り出す人工脳である。

 しかし、だ。脳を丸ごとニューロモルフィック・コンピューター上のバーチャルな空間に再構成できるのだとすれば、人間の脳シュミレーターが完成した時、それはただの機械なのだろうか? 脳を作るというHBPは、文字通り、本物の脳をコンピュータ上に作り出してしまうのではないか?

 HBPを端緒として、文字どおりの人工知能が生まれる可能性はゼロではない。携帯電話がインターネットにつながるように、ネットワークと脳がつながり、さらにそのネットワークと脳シュミレーターが接続されたら……。

 別の可能性も見えてくる。脳と互角の速度で情報処理が可能になった時、自分の脳をコンピュータ上に再構成すれば、それは自分自身を丸ごとコンピュータにコピーすることにならないか。

 SFでは人が永遠に生きる技術として、コンピュータ上に意識をコピーする精神転送=マインドトランスファーがガジェットとして登場する。肉体は滅んでも、精神はネットワークにコピーされ、生き続けるのだ。

取材・文 川口 友万

【了】

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