日仏メディアアートのフェスティバル「デジタル・ショック」開催中 テーマは“フュチュラマ”(未来展望)

メディアアートやデジタルカルチャーが脚光を浴びる国・フランス。今ならそのトレンドが「デジタル・ショック」で体験できる。

山下祐司| Photo by Yuji Yamashita

スポンサーリンク

プログラムと意思を隔たるものは何か

フランス
アンスティチュ・フランセ東京の文化プログラム主任サンソン・シルヴァンさん
【写真:山下祐司】

 デジタルカルチャーのフェスティバル「デジタル・ショック」は今年で5回目を迎えた。

 アンスティチュ・フランセ東京の文化プログラム主任サンソン・シルヴァンさんは「アートや建築を含めた様々な分野がどうデジタルの影響を受けるのか、提示するのがコンセプトです」と語る。

 今年のテーマはフランス語のフュチュラマ、未来展望だ。アンスティチュ・フランセ東京を中心にメディア・アンビション・トーキョー(MAT)や芸術祭Art, Media and I, Tokyo(AMIT)などと協力しながら数々のイベントを開催している。

 アンスティチュ・フランセ東京で展示されている作品は3種類。フランスの映像プロダクション、OKIOスタジオが送るヴァーチャルリアリティ(VR)作品は4つ。

 特に目をひくのがVRショートフィルム「I,Philip」。映画ブレードランナーの原作『アンドロイドは電気羊の夢を見るか? 』など数々の名作を生み出したSF作家フィリップ・K・ディックの意識をコピーしたロボットの物語だ。VRでフィリップと同一化することで、ロボットの「感情」を体験する。

フランス
VRショートフィルム「I,Philip」の主人公、フィリップ
【写真提供:アンスティチュ・フランセ日本】

 自由意思の存在を疑わないロボットのフィリップに向けられるのは、人々からの好奇なまなざし。

 投げかけられる質問に、どれほど理知的に答えてもその外見から事前に準備されたプログラムによる応答だとしか思われない。

 フィリップに注がれる視線をVRで共に受け止めると、自由意思の存在をもつのは人間だけの特権だと、信じて疑わない人の散漫さがみえてくる。

 特に言葉だけでなく態度にもあらわれるのが極めて興味深い。とはいえ、ストーリーが進むとその人間性にのみ魅了されているのが、フィリップの視線を通した自分だと再認識できる、ロマンチックな作品だ。

 人間知能が人間を超える能力をもつ、シンギュラリティが注目を集めるがプログラムと意思を隔たるものは何か、自由意思とは何か刺激をあたえ続ける作品だ。

1 2
俳句

PAGE TOP ↑