40ドルのわたあめメーカーで毛細血管が作れる!? 噴出す“細い糸”から着想

ザラメを入れて生まれるふわふわとした白い綿を巻き付けるわたあめ。米国ではこのわたあめ製造器を利用して、毛細血管をつくっている。

岡真由美| Photo by Vanderbilt University

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綿あめ
細胞にやさしい方法でマイクロネットワークを作れる【写真:Vanderbilt University 】

 米国・バンダービルト大学のレオン・ベラン准教授は回転しながら、高密度で複雑な構造の「細い糸」を作り出すわたあめメーカーを見て、数年前から毛細血管の作成に応用できないかと考えてきたという。ベラン准教授は説明する。

「このアプローチが狂っているという人もいる。しかしこの単純な手法を用いて、細胞にやさしい方法でマイクロネットワークを作れることを証明した。

 一般に2次元の平面的なネットワークを作るのは簡単だが、立体的な3次元はかなり難しい。しかしこの手法だと自由に3次元ネットワークを作ることができる」


動画:「VU INSIDE: Cotton Candy and Artificial Blood Vessels」 Vanderbilt University

 2月8日に米国・バンダービルト大学が公開したニュースレターによるとベラン教授らは、わたあめメーカーの回転原理を利用して直径3~55ミクロン、平均35ミクロンの人工毛細血管網のベースを作り上げた。

 わたあめメーカーと原理的にはまったく同じだが、はるかに高速に回転する機械をつかい繊細な糸を高密度で複雑に絡ませる。

 開発したわたのベースを使って立体的に細胞を培養すると、実物に近い人工毛細血管網ができた。

 従来の手法では直径100ミクロン以上と、実際の毛細血管の約10倍太い“毛細“血管網しか作れず、あくまでシート状で立体的な毛細血管網とはいえなかった。

 この「わたあめメーカーの原理を利用する」という一風変わった手法で作成した人工毛細血管網の細胞たちは1週間以上生育し、血管としての機能も維持していた。

 ベラン准教授らの次なる目標は、この単純でコストのかからないアプローチによって肝臓や腎臓、骨、その他の人工臓器の作製に必須な人工血管が、誰でも作れるような基本的な『道具箱』を作ることだという。

取材・文 岡 真由美

【了】

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