南極観測隊員が火星へ! 日本人の極地建築家が模擬火星有人探査計画「MA160」に選抜
2030年以降の有人火星探査の実現のため世界各地で模擬実験が行われている。その一つのミッションMA160の正規クルーに一人の日本人が選ばれた
スポンサーリンク「月面基地の先祖になりたいですね」
――火星に一人取り残された宇宙飛行士が救出されるまでを描いた映画『オデッセイ』は評判が良かったようですね。ご覧になってどう思われましたか?
「クルーの規模や基地の規模、ロケットの燃料を向こうで生産するなどの設定はマーズダイレクト計画を元にしています。
計画を考えたのがザ・マーズ・ソサエティの創始者であり有人火星探査の第一人者のロバート・ズブリン博士です。最先端の考察をふんだんに盛り込んだ映画ではないでしょうか。ただ……、主人公がポジティブすぎるかな(笑)」
――9月から始まるミッションに向けて、今どんな準備をしているんですか?
「飲み水と食料、電力などの基本的なことから、現地で行うミッションの内容、それぞれのクルーが担当する役割、地球側のサポートチームなどを決めていきます。今は毎週一回一時間程度のウェブミーティングを行っています。
僕はこれまでの極地経験を買われて、チームの副隊長になることになりました。野外や基地内でのミッションを、実務的な面でクルーや隊長を支えていくことになります。」
――デヴォン島のミッションで、三極(世界の三大極地、エベレスト、南極、北極)を全て制覇することになりますね。
村上さんが極地で過ごすのは探検家としてではなく、暮らすための知識や経験を宇宙建築に反映させることが目的だそうですが、今どのような月面基地の構想を持っているのでしょうか?
「月面基地の先祖になりたいですね。100年も経てば、月面に基地は建っていると思います。その思想の基礎として、僕が極地で学んできた生きて行くためのノウハウが活かされるようになればと思います。
昭和基地がそうであったように。未来ではその形は変えてもいいし、エッセンスを汲んで作ってくれてもいい」
――50歳には月に立ちたいとか?
「南極観測隊のときにも、つてのないまま4年待ち続けて実現しました。50歳というメルクマールに根拠はありません。ですが、思わないことは叶わないですから」
日本火星協会のHPで村上さんのレポートが見られる予定だ。
取材・文 石水 典子
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