成長期の運動はなぜ重要なのか? “菌活”が未来の健康につながる可能性

アメリカの大学で、若いころの運動が「よい」腸内細菌を育て未来の健康に役立つという、興味深い仮説が発表された。大人の健康維持に重要なのは、過去にちゃんと運動をしてきたかどうかだという。

山下祐司| Photo by Getty Images

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若いときはなるべく体を動かそう【写真:Getty Images】

 コロラド大学のアギネシュカ・ミカ博士とモニカ・フレシュナー教授が腸内細菌に関する興味深い仮説を発表した。若いころの運動が腸内の細菌構成を変え、その影響で大人になった後の脳と身体の健康を維持できるかもしれないという。免疫学の専門誌「Immunology and Cell Biology」に掲載された。

 ヨーグルトや納豆を食べるだけという手軽さもあって、美容と健康の定番となっている菌活。人の腸内には多様な細菌が住みつき、大人の腸では100兆個以上、約1キログラムもの腸内細菌が共生している。

 腸内細菌は腸内に入った病原菌の増殖を抑え、食べ物を分解しエネルギーの吸収を助ける。また、神経伝達物質のドーパミンやセロトニンをはじめとした、さまざまな有効物質を作り出し、脳や神経系の発達や免疫系の調節などに関わる大切なパートナーだ。

 コロラド大学の過去の研究では、青年期から成年期に入る6週間にわたってラットのオスに運動をさせると、運動しないラットと比較して腸内細菌の構成に違いがみられた。運動するとユリアーキオータ門とバクテロイデス門の細菌の割合が増え、相対的にファーミキューテス門とプロガクテリア門の細菌が減っていた。この腸内細菌の構成は運動をやめ、大人になっている25日後にも維持されていた。

 腸内に住む細菌の腸内構成は常に同じではなく、成長段階によっても変化する。たとえば、生後約1カ月の人の乳児はビフィズス菌の割合が多いが、離乳食を取り始めるとその割合は減少し、ほかの腸内細菌が増えてくる。成長とともに腸内細菌の構成は安定することがわかっている。実験では6週間の運動によってラットの腸内細菌の構成に変化が生じていた。

 運動の影響は、身体にもあらわれ、筋肉量の指標にもなる除脂肪体重が増加していた。除脂肪体重とは体重から脂肪組織の重さを差し引いたもの。青年期に運動したラットは、運動しないラットと比較すると除脂肪体重が多く、運動をやめた25日後にもその違いは維持されていた。

 しかし、大人になった成年期のラットに同じように6週間に運動させても、腸内細菌の構成に大きな変化はみられず、除脂肪体重の増加はみられなかった。運動の効果が、腸内細菌と除脂肪体重に影響するのはあくまでも若いときに運動したときだったのだ。

 若いころの運動が身体や脳の発達にプラスに作用すること。解明されてきた腸内細菌の有用な働き。そしてこの結果などを踏まえてコロラド大学のチームはこの仮説を発表した。

 運動するタイミングの違いで、腸内細菌を介した体への影響が変わるのか。体を健康にする運動の潜在的なメカニズムと、子どもから大人への成長する間に腸内細菌の働きがどのように変化するのか、体系的な研究が必要だと指摘している。

 あくまでもラットの研究をもとにした仮説ではあるが、運動で健康といって話題になるのは大人ばかり。最も体が成熟する中学生から高校生にとっても適度な運動は健康にプラスになる。若いころの運動の重要性に目を向けさせる仮説でもある。

取材・文 山下 祐司

【了】

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