48種の細菌を国際宇宙ステーションに送って増やしてみた!! 宇宙と地球で比較実験

様々な場所から集められ、選び抜かれた48種の細菌。地球でも宇宙と同じ日に同じ実験を行った結果、増殖の異なる細菌が見つかった。

山下祐司| Photo by Getty Images

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細菌
国際宇宙ステーション(ISS)【写真:Getty Images】

 身の周りに生息する細菌を宇宙に打ち上げ、地球と宇宙で増殖の比較実験する市民参加型のプロジェクト「MERCCURI」の分析結果が3月22日、科学誌『PerrJ』に発表された。
 
 カリフォルニア大学のジョナサン・アイゼン教授やディビット・コイル博士らを中心に、細菌に興味をもってもらおうと2012年にスタートしたこのプロジェクト。宇宙に打ち上げる細菌を米国市民が集めるところからはじまった。

 非常にユニークなのはその細菌を採取した場所。

 汚れていることで有名なスマートフォンのディスプレイ、カリフォルニア州のデイビス市にあったトイレ、MBLのサンフランシスコジャイアンツの球場にある2塁ベース、NBAのサンアントニオ・スパーズの練習場にあったモップ、NFLのサンフランシスコ49ersの競技場。

 そして博物館のティラノサウルス、人類ではじめてソ連のユーリーイ・ガガーリンが宇宙飛行を実現した4月12日に記念して行われるYuri’s Night のニューヨーク会場のドアノブなどかなりへんてこな場所から集めた。

 宇宙選抜の条件は病原性をもたないこと。これまでに宇宙に打ち上げられ、研究された細菌は大腸菌や緑膿菌のように病原性のある種ばかり。

 しかし、地球では病原性のない細菌たちを含めた生態系が、病原性のある細菌の生存や人への感染を左右することもある。なぜなら、温度や湿度をはじめとした環境の影響を強く受け、密接に関わり合うからだ。

 だからこそ、これまで日の当たらなかった病原性のない細菌にも注目する必要があったと研究者たちは説明している。そして、バシラス属やミクロコッカス属、コクリア属などの48種の細菌が選抜された。

 48種の“精鋭”たちは別々の容器で-80℃に凍らされ、2014年4月18日に民間の宇宙開発会社Space-Xのロケットに乗って国際宇宙ステーション(ISS)まで運ばれた。

 その後、宇宙で解凍され2014年12月8日から4日間かけてISS内で培養。冷蔵保存され2015年2月10日に地球に帰還した後に解析された。地球でも宇宙と同じ日に同じ実験を行っている。

 48種の細菌のうち宇宙育ちと地球育ちで違いがみられたのは3種類のみ。よく調べてみると、このうち2種の入っていたい容器には別の細菌が混入して増えていたことが判明。ということで、宇宙と地球で増殖が異なるのは1種類の細菌だけだった。

 その細菌はBacillus safensis。宇宙線が降り注ぎ、微少重力しかないISSの中でより盛んに増殖し、地球の6割増の増え方をみせた。このBacillus safensisは、NASAに所属するジェット推進研究所の火星探査機を組み立てるクリーンルームではじめて採取された細菌。

 火星探査機に付着して、すでに火星で増えているのではと考えられている細菌でもある。Bacillus safensisに属する別の細菌は塩分濃度が高いところでも増殖できることがわかっている。

 なぜ、Bacillus safensisだけが宇宙空間で増殖が促進するのか、研究の進展が楽しみだ。

取材・文 山下 祐司

【了】

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