速読で内容把握力もアップはウソだった。速く読むと理解度は落ちるという事実

活字から得る情報は誰だって短時間で大量に吸収したいと思っているだろう。しかし、安易な速読術は理解力の妨げになるという。

岡真由美| Photo by Getty Images

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熟読と速読、使い分けが大事【写真:Getty Images】

 速読術や訓練のためのサイト、アプリは数多く存在する。

 しかし、読む速度が上がるほど実は理解できていないという研究論文が、今年1月にカリフォルニア大学サンディエゴ校心理学部のキース・レイナー教授らによって、「サイコロジカル・サイエンス・イン・ザ・パブリック・インタレスト」に公開された。

 レイナー教授らは速読に関するさまざまな報告書や研究結果を調べた結果、「読む速度と内容の理解度はトレードオフの関係にある」、つまり「理解度を落とさずに読む速度を上げるのは困難」という結論に至った。

 短時間で少しでも多くの情報を吸収したいと願う人は数多い。

 文章を速く読むための「速読術」は、受験や資格取得の勉強、仕事の効率向上にも役立つといわれ、速読術を習得すれば、文章を読む速度がアップするだけでなく、理解力も向上するとうたっている書籍やサイトは少なくない。

 速読技術がアメリカで最初に紹介されたのは1959年で、イブリン・ウッド氏による「リーディング・ダイナミクス」プログラムが先駆けだといわれている。

 近年再び注目されるようになり、速読訓練用のスマートフォンやタブレット用のアプリも数多くリリースされている。

 数ある速読法の中でも最近人気なのが、パソコンやスマホの画面に1度に1単語ずつをすばやく表示する「高速逐次視覚提示(RSVP)」と呼ばれる方法だ。

 この提唱者らは、目の余分な動きをおさえ、通常よりも速く読み取れると主張している。

 だが、レイナー教授らがRSVPを含むさまざまな速読についての調査、研究結果を調べたところ、読む速度と内容理解を同時に高められる簡単かつ特別な方法は存在しないことがわかった。

 ちなみに、教授らによると、大学教育を受けた一般的な成人が黙読をした場合、内容を正しく理解できる速度は1分間に200~400ワード(英語の場合)であるという。

『スキミング(文章の中で重要な部分のみ拾い読みする方法)』は特定の情報をすばやく見つける場合には効果的だが、細部までは理解できない欠点がある。

 訓練によって確かに読書スピードはアップするが、内容の理解力は言語能力(語彙の豊富さなど)と密接な関係にあるため、読む速度と理解力を同時に簡単に向上させるのは難しいと教授らは結論づけている。

 筆者も昔、速読教室に通ったことがあるが、正直目が疲れるだけで内容はさっぱり頭に入ってこなかった。内容を大まかに把握すればいいものはスキミング(いわゆるななめ読み)、深く理解する必要があるものは熟読と、使い分けるしかないようだ。

取材・文 岡 真由美

【了】

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