銀河系衝突で巨大地震が発生。ダークマターの謎解明の糸口となるか
目に見えない銀河系と我々の銀河系が衝突、巨大な宇宙地震を発生させているという新説が発表された。謎多きダークマターの解明の日は近い――?
スポンサーリンク 巨大な星の渦巻きである銀河系。その周辺部から謎の振動が発生、銀河系全体が揺れている。
その現象が観測されて以降、銀河の淵で何が起きているのか不明だったが、米ロチェスター工科大学のスカニャ・チャクラバティ博士らは、今年1月7日、米国天文学会の年次総会で新説を発表した。
目に見えない物質、ダークマター(暗黒物質、質量は持つが光学的に直接観測できない)でできた、目に見えない銀河系と我々の銀河系が衝突、巨大な宇宙地震を発生させているというのだ!
銀河団外縁部のガスで起きている大きな波は「銀河の地震」のようなものであり、ダークマターで占められた矮小銀河が衝突した結果、大きな波が生じたとし、「池に石を投げ込んでさざ波を作るようなもの」と博士は説明している。
大きな銀河の周りを公転するサテライト銀河の大半は、ダークマターで構成されているために見えない存在となっている。
2013年、欧州宇宙機関はプランクの観測結果から、宇宙の質量とエネルギーに占める割合は、原子などの通常の物質(ノーマルマター)が4.9%、ダークエネルギー(宇宙全体に浸透し、宇宙の拡張を加速しているとされる仮設上のエネルギー)が68.3%、ダークマターが26.8%と発表している。
ノーマルマターの密度が高い場合は、多くの星が生まれるために星や星座を見ることができるが、ダークマターが圧倒的な銀河では遠く離れると星はほとんど見えないとされている。
チャクラバティ博士らは、銀河のガスに生じている波によってこれら目に見えない銀河の位置を確認する方法を考えた。
地震波の速度によって地球の内部構造が推定できるように、銀河のガスの波によって構造と質量がわかるのではと考えたのである。
2009年、博士らはじょうぎ座に矮小銀河が存在するとの予測をたて、上述の方法で観測をスタートした。そして去年、ついに地上最大級の望遠鏡、巨大マゼラン望遠鏡を使って、同銀河にケフェウス型変光星と呼ばれる3つの脈動星を発見した。これら3つの星は我々の太陽からの距離が約30万光年と、ほぼ等しい。
分析の結果、3つの星が銀河の中心から遠ざかっていく速度が約200キロ毎秒とほぼ同じで、平均的な銀河系内の星の速度(12キロ毎秒)よりもはるかに速いことが判明した。
これらの研究結果から、3つの星は地球を含む銀河には所属せず、目に見えない矮小銀河に含まれるものであると結論づけたのである。
目に見えない何ものかと衝突し、ある日、銀河系が崩壊するかもしれないなんて、SFよりもSF的な話である。いまだ正体不明のダークマターだが、この研究をきっかけに、その姿が白日の下にさらされるかもしれない。
取材・文 岡 真由美
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