【食べる科学実験】電気肉がおいしくなる理由がついに判明! 麻布大学・坂田亮一教授に訊く 最終回(全3回)

電気を流すと肉がおいしくなる、謎の現象“電気肉”。その謎を知る人物、麻布大学獣医学部・食品科学研究室の坂田亮一教授と接触、メカニズムを教えてもらった。

川口友万| Photo by tomokazu kawaguchi , Stephen Ausmus|シリーズ:食べる科学実験

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グルメオーラをまとう、にゅう肉組組長

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東京ビッグサイトの農業フェアにて、麻布大学のブースに坂田亮一教授に会いに行く【写真:川口友万】

 都内で開かれた農業関連の展示会『アグリビジネス創出フェア』に来ていた。
 
 電気肉、すなわち鶏の胸肉に電流を流して熟成を早める『Eチキン製造システム』の生みの親、麻布大学獣医学部・食品科学研究室の坂田亮一教授にお会いするためである。

 作品で電気肉を取り上げた蛇蔵さんにしても、私にしても、電気肉をこの世に出した坂田先生とは一面識もないのだ。坂田先生にひと言の断りもなく、我々は研究結果をネタにしているわけで、非常に気まずい。

 気まずいなあ~とウロウロして……見つけた。

 麻布大学のブースは肉肉肉肉! 食品科学研究室、別名が肉組、最近は乳製品も扱うので、『にゅう肉組』! さすがにゅう肉組を名乗るだけのことはあり、ソーセージとパテの中間のような、何やらおいしそうなものが置いてある。

 坂田先生は食肉のエキスパートであり、ハムやソーセージを作り、イノシシやシカの調理方法を研究し、卒業生は大手食品メーカーに就職する。そうした、にゅう肉組の卒業生の1人が入社したのが、株式会社前川製作所だ。

 産業用冷凍・冷蔵機や食肉関連の自動化システムを開発販売しているB to B企業である。『Eチキン製造システム』は前川製作所と坂田先生が共同で開発したシステムなのだ。

 初めてお会いした先生は、にこやかでどっしりした、まさに、にゅう肉組組長。店に入って料理人を見たら、(あ、絶対おいしい、ここ)と確信できることがある。

 見るからにおいしいものを作りそうなオーラが出ているのだ。少年ジャンプのトリコ的に言えば、グルメオーラが後光のように射しまくっている。

 坂田先生からもグルメオーラが出ていた。

 う、うまそう! 

 眉をひそめながら坂田先生が言った。

 「どういう経緯でマンガに載ったの?」

 グルメオーラに見惚れている場合ではない。

 慌てて、蛇蔵さんから聞いたまま、マンガのネタを探していて、麻布大の卒業生から肉に通電する話を聞きうんぬんという話をする。

 「それが『決してマネしないでください。』?」

 そうですそうです、学生が実験して、女の子を口説こうとして失敗して爆発したりするマンガで。それを私が読んで、本当かなと思って、ちょっとやってみたという話なんですけど。あはは、変なマンガですねえ。

 「麻布大の学生って誰かな。僕の研究室の卒業生じゃないだろうな。それなら私に、先生、これこれこういうことでって話があるはずだからね……それでこの方がやってみたと?」

 いや、蛇蔵さんは本当に味が変わるかどうかわからないと言っていたんで、じゃあやりましょうかと。ちょうど私、スライダック持っていて、まああの、私は実験でテレビ出たりしてて、中華鍋をテルミット反応で溶かしたりとかそういうことやっていてですね。

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不信感ありありの坂田先生。当たり前である【写真:川口友万】

 「あなたはこの方とお知り合い?」

 そうです、そうです。
 
 「はあ~ん」

 ……考えてみれば、わけがわからない話である。ある日突然、見知らぬ男が原稿を送ってきて、あなたの研究がマンガに載っていたので、それを実験してみた、間違いないようなので仕組みを教えて欲しい、である。

 無礼とか無礼じゃないとか以前に、意味がわからない。

 マンガの作者が連絡してきたならまだしも、それを読んだ人間が勝手に原稿に書いてしまっているのだ。しかもその男がしどろもどろでする自己紹介が、中華鍋を超高温で溶かして、芋バズーカをそのマンガの作者と撃ってきましたって、そんなの、説明にも何にもなっていない。

 説明している私もわけがわからないのだから、坂田先生がわかるわけがないのだ。

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