私以外あなたの子じゃないの? 血筋から将来性まで見抜く遺伝子検査

玉石入り乱れた遺伝子検査サービスに、この春から「認定制度」が導入されることになった。「究極の個人情報」を取り巻く世界に秩序は訪れるのか。

工樂真澄| Photo by Getty Images

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遺伝子上、あなたが歌手になる可能性はゼロです

遺伝子
遺伝子検査は究極の占い? 
【写真:Getty Images】

 ほとんどの検査は疾患に関する遺伝子が対象で、がんや脳卒中、糖尿病、高血圧など、思いつく限りの病気が検査項目に並んでいる。

 アンジェリーナ・ジョリーが、BRCAという乳がんや卵巣がんの発症に関わる遺伝子の検査結果を受けて、予防のために両乳腺切除手術を受けたのは記憶に新しい。

 BRCA遺伝子に変異があると、乳がんを発症する確率は70%とも言われる。ただし「遺伝性の乳がん」は、乳がん全体の1割に過ぎない。

 他の9割は遺伝とは関係なく発症していると考えられるので、遺伝子検査で陰性だったとしても、乳がんにかからないというわけではない(参考:「患者さんのための乳がん」 日本乳癌学会編 金原出版)。

 その逆もまた正しく、検査が陽性だからと言って必ずしも発症するわけではない。

 変わり種はテレビ番組でも紹介された、子どもの潜在能力を調べる中国の遺伝子解析サービス『上海バイオチップコーポレーション』。

 記憶力や思考力などの「学習や知能」に関する遺伝子、社交性や冒険心など「性格」に関するもの、美的感覚や色彩感覚などの「芸術的センス」や「ダンス」、そして持久力や筋力など「運動」に関する遺伝子を調べてくれる。

 人生の可能性までわかってしまう、いわば究極の占いが遺伝子検査なのだ。ちなみに、ある検査機関では300近い検査項目(=遺伝子)を調べて、お値段29800円! 

 高い? いや、ちょっと待って。名の知れた占い師にかかれば数万円である。それが「科学的」に信憑性があってこの値段だ。安いでしょ、むしろ。

 しかし遺伝子がすべてを決定していると考えるのは早計だ。

 たとえば記憶力の判定に用いているBDNFという遺伝子がある。「脳由来神経因子」で、神経細胞の維持や成長などに関わっている。

 BDNFは大脳皮質や海馬などに多く存在して学習や記憶の形成に関わるとともに、アルツハイマー病やうつ病などの精神神経疾患との関連が報告されている。

 この遺伝子がより活性化していれば、つまりこの遺伝子配列が多ければ、記憶力が抜群なのか? そう単純ではないのが人間だ。

 BDNFが記憶に関わる遺伝子だとしても、この遺伝子だけが記憶力を支えているわけではない。こうした疑問を察してか検査の解説書の中にも、「読み書きと暗証を繰り返すことによって記憶を深められます」と書いてある。うーん、じゃあ何のための検査なんだ?

 また占いと違って、遺伝子検査の結果が気に入らないからといって、何度もやり直すのは意味がない。遺伝子はそうそう変わるものではないからだ。

 さて、あなたは持って生まれた運命を受け入れる覚悟はあるだろうか!?

参考資料

「消費者向け遺伝子検査ビジネス」平成28年3月 資料 厚生労働省

「遺伝子検査ビジネスに関する調査」平成24年度 報告書 経済産業省

取材・文 工樂 真澄

【了】

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