南極観測隊員が火星へ! 日本人の極地建築家が模擬火星有人探査計画「MA160」に選抜
2030年以降の有人火星探査の実現のため世界各地で模擬実験が行われている。その一つのミッションMA160の正規クルーに一人の日本人が選ばれた
スポンサーリンク世界でたった7人! 火星に挑む選抜クルー
アメリカのNPO法人「The Mars Society」が行う模擬火星有人探査計画MA160に、日本人で唯一、極地建築家の村上祐資さんが選ばれた。村上さんはチームの副隊長に就任する。
約3年間にも及ぶクルーの選考期間があり、2016年4月6日に正式発表がされた。
計画では、2016年9月~12月に、米ユタ州の火星を模した研究基地MDRS(Mars Desert Research Station)に80日間、2017年夏季に北極圏にあるデヴォン島の模擬基地FMARS(The Flashline Mars Arctic Research Station)に80日間、完全に閉鎖された環境で選抜された7人のクルーが身を置く。
村上さんは第50次南極観測隊の越冬隊員で、エベレストやシシャパンマ(ヒマラヤ山脈)のベースキャンプなどに長期滞在をしてきた極地の専門家である。
――長い選考期間でしたがついに発表、という感じでしたね。最終選考は具体的にどのような内容だったんですか?
「2014年12月からユタ州のMDRSに2週間、有人火星探査のための模擬実験を行いました。午前は宇宙服を着て野外調査をします。
火星探査で使うであろう掘削機、小型のローバー(探査車)を実際にフィールドでテストしたり、新しい機器のトライアルなどを行います。
午後には活動のレポートを作成し、地球サポートチームに作業報告と翌日の予定を伝えるキャプコム(通信作業)を行います。
火星を模しているとはいえ、地球上では環境が違いますよね。僕は「本気の火星ごっこ」と呼んでいます。たとえばケガをしたときに、地球上では服を脱がせて応急処置を行いますが、火星では宇宙服を脱がせたら死んでしまいます。
クルーたちが閉鎖環境に身を置くことで、シュミレーションをしながら本気で議論をし、課題を洗い出すことが目的です」
――最終選考中は、課題の評価を上げるためにキャプコムでのアピール合戦があって、ぎすぎすした空気になることもあったとか。そこで村上さんはクルーたちが登場するビデオを作成したんですよね?
動画:LOST+FOUND [Official Trailer] Mars Arctic :You Tube
「今までの流れを変える意味での仕掛けというか……、いたずらですね。笑」
――周囲の空気を読むところが、日本人ならではですよね。ミッション中に座禅もやっていたそうですね?
「瞑想はコツをつかむと、自分の気持ちをコントロールするいいツールになります。国際的なメンバーは、みんな神秘的なものに関心があり禅に興味を持っているので、知っている範囲で教えていました」
――村上さんが極地で生活するときには、80%の力でいるようにコントロールされると聞きました。
「ミッションなどに参加すると、どうしても肩の力が入るので、少し力を抜くぐらいほうがいいですね。長い目で見たときに、いずれ張り詰めたものが折れる瞬間が非常に危ないんです」