【食べる科学実験】電気肉は本当に旨くなっているのか!? 人工知能搭載味覚センサー出動! 第2回(全3回)
鶏胸肉に電流を流すとおいしくなるらしい? インチキ科学か、食の革命か? その真偽を調べるため、人工知能搭載の味覚センサーで電気肉を分析! すると驚くべき結果が出た!
スポンサーリンク味覚センサー『レオ』とは何者か?
食べ物の味を客観的に測るには、人間はいい加減すぎる。だが機械なら? 機械を使って甘味、酸味、苦味、塩味、うま味の5つの味覚を数値化できれば、その結果は精度が非常に高いだろう。
そんな便利な機械があるのか? あるのだ。それが慶應大学理工学部で開発された味覚センサー『レオ』である。
このレオくん、見た目はプリンター、頭脳は計算機、にもかかわらず! たったひとつの味を見抜く、味覚探偵マシンである。
いちご味だろうがブルーハワイ味だろうが、かき氷のシロップは色が違うだけで全部同じ味だ! と見破り、ゆで卵の黄身にハチミツをかけたら栗の味だ!と言い切り、味にうるさいこと、山岡士郎のごとし。
そんなレオくんを所有する株式会社AISSYは慶応大学・矢上キャンパスにある。同社代表取締役 社長の鈴木隆一氏に話を聞く。鈴木氏は『味博士』の異名を持つ、味のプロフェッショナルである。学術分野における山本益博、グルメかどうかはともかく、味覚の科学なら日本屈指だ。
「私たちは味覚を感じますが、その仕組みは大きく分けて2つあります。1つは塩味や酸味のように、ナトリウムや水素など味を構成する分子がイオン化(液体の中で電気を帯びている状態)したものを舌で受け取るものですね。レオの電極の表面にイオンが付くことで、電極の電位差が生じるのでそれを測ります」
一方、糖やアミノ酸、核酸といった甘味やうま味は分子が大きく、イオン化しない。そのため、電位差での測定は使えない。
「レオでは酵素を使っています。たとえばスクロースならスクロースを分解する酵素を用意します。分解過程は酸化還元反応なので電子がやり取りされます。電子量が増えれば、それだけ電流が流れます。電流を測定すれば、含まれている成分の量がわかります」
成分分析ができたとしても、それが人間の味覚と同じかといえば、そうではない。たとえばブラックコーヒーに砂糖を入れていくと甘さが増し、苦みは減っていく。成分の濃度は変わっていないのに、そういうことが起きる。だから成分が分析できても、味覚は単純には数値化できない。
「そこでニューラルネットワーク解析、人間のニューロンを再現したソフトウェアを使います。ようは人工知能ですよね。電極がこういう値を示したらこういう味だと学習しているんです」
これがレオの肝の部分で、特許も取られている。株式会社AISSYはレオを使った食品の受託分析を行う会社なのだ。