これが今年のトピックスだ! 金星の謎を日本が解明? 宇宙像が激変? 【ニュートン編集部が大予想! 02】 

『ニュートン』は日本を代表する老舗科学雑誌だ。編集部長である高嶋秀行さんに、今年注目すべき科学トピックを伺った。

川口友万| Photo by Tomokazu Kawaguchi,Newton|シリーズ:ニュートン編集部が大予想!

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「インフレーションの実証」でノーベル賞?

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またノーベル賞? 自然科学研究機構長 佐藤勝彦先生【写真提供:自然科学研究機構】

「インフレーション理論という、宇宙が誕生した直後についての理論があります。

 宇宙は誕生直後に凄まじい超急膨張をしたと言われています。

 10のマイナス30乗とかマイナス40乗秒、1秒の1兆分の1の1兆分の1の1兆分の1くらいのほーんのわずかな時間に宇宙が10の40乗倍程度の大きさになったという(笑)

 光の速度なんかの比ではない凄まじい速さで膨張したと言われてるんですね。
 
 普通に考えたら何を言ってんだって感じですよね(笑)

 素人的にはそうなんですけど、これが今の宇宙論の標準的なシナリオになってるんですよ。ただし、実証がない」

――あくまで仮説?

「理論を支持する観測結果はあるんですが 、まだ「実証できた」というレベルではないんです。

 ところが、2年ほど前の2014年、インフレーションの証拠というものが見つかったという観測発表があったんですね。

 大昔の宇宙はすごく小さくて熱かったんですね。それがいわゆるビックバンなんですけど、宇宙の最初は灼熱状態で始まったんです。

 なんでもかんでも熱くなれば発光しますよね。真っ黒な炭でも熱すれば真っ赤になるように。

 当時は宇宙自体が発光してたというか、宇宙自体が光を放ってた状態です。

 宇宙の中にあるガスとかが発光していた。
 
 その後も宇宙はどんどん膨張していって今に至ってるんですが、ビッグバンの時に宇宙を満たしていた光が今も残ってるんです。それが宇宙背景放射です。

 空間が膨張するにしたがって、宇宙背景放射の波長は伸びていきます。

 それを詳しく観測すると、宇宙についての色んな情報がわかります。

 宇宙の最初の段階からある光ですから、宇宙の最初の情報を含んでるんです。

 なのでそれを物理学者の人がいろいろ解析するといろんなことがわかる。

 その中のひとつがインフレーションの証拠です」

――宇宙が膨張している証拠?

「そうではなくて、誕生した直後に爆発的に宇宙が膨張した、その証拠です。

 インフレーションで、ビョーンとすさまじい勢いで宇宙が膨張して、そのときに空間のわずかな揺れみたいなものが生じたと言われています。

 これは「原始重力波」と呼ばれていますが、その揺れが宇宙背景放射にも影響を及ぼしている。

 宇宙背景放射を観測することで、その揺れの痕跡を見つけられるんじゃないか? と考えられているんです」

――それが見つかった?

「いえ、結局それは違うものを見てた。誤認でした。

 しかし観測技術は着実に成長しています。

 今回はダメだったけど、他にもたくさんのグループが同じようなことをやってるので、その痕跡がいつ見つかってもおかしくないかもしれません。

 生まれたての宇宙が信じられない膨張をした、その痕跡がみつかるというのはすごく大きいことです。

 宇宙の誕生の謎が1つ解けるという話なので、たぶん見つかったらノーベル賞級ですね」

――それはすごい。

「当然、インフレーション理論の提案者もノーベル賞の候補になるでしょう。

 日本では佐藤勝彦先生がその提唱者の1人なんです。

 元東大の教授で、現在は自然科学研究機構というところの機構長をやられています。

 英語圏ではアラン・グースという人が提唱者として有名なんですけど、時期的には佐藤先生の方が提唱は早かったそうです。

 もし証拠が見つかれば、佐藤勝彦先生がノーベル賞を獲る可能性はありますね」

――共同受賞みたいな感じになるかもしれないですね

「インフレーション理論に基づいて考えると、宇宙はいっぱいあることにならざるを得ないとも言われています。

 佐藤勝彦先生も、インフレーション理論に基づくと、親宇宙から子宇宙が生まれ 、子宇宙から孫宇宙が生まれと雨後の筍みたいにポンポンポンポン、宇宙から宇宙が生まれるというのが無限に連鎖して宇宙がいっぱい生まれますよっていうことも言ってるんですよ」

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ニュートンは毎月26日発売科学雑誌 ニュートン【画像提供:ニュートン】

――宇宙がいっぱい?

「マルチバースと呼ばれています。今までは観測可能なところだけが宇宙だと考える慎重な研究者が多かったわけです。

 観測不能な別の宇宙のことなんて、科学者として議論すること自体がダメだろうと。

 しかしインフレーション理論が観測によって実証されたら、マルチバースを真剣に考えざるを得なくなります。

 そういう一見、荒唐無稽にも思える宇宙を、学者たちが真面目に考えなきゃいけない時代に本格的に入るかもしれない。宇宙観自体が変わってしまう可能性があるんです。

取材・文 川口 友万

【03につづく】

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