小保方晴子氏は未だ夢うつつ。手記『あの日』で繰り返される、自己弁護と的外れな若山氏批判
2014年、世間を騒がせたSTAP細胞“ねつ造”騒動。時を経て出版した手記『あの日』には、今もなお時を止めたままの小保方氏の姿があった。
スポンサーリンク信じて疑わない「STAP細胞」の存在
小保方氏は、自分が実験して作製した「本物」のSTAP細胞は存在し、ねつ造されたSTAP細胞と切り離して考えて欲しいと主張する。
ねつ造の原因になった、STAP細胞は若山氏がES細胞にすり替えて実験したと考え、本当にDNAを解析すべき自分が作製したSTAP細胞の実験サンプルは、不可解なことに研究室から消えていたと説明する。
そして、小保方氏が自ら行った最後の検証実験で、STAP細胞の存在をほのめかす。
『辞表は検証実験の部屋で書き、12月15日、当日の事務所長に提出した。
……最後に細胞塊に現れたE-カドヘリンの蛍光染色写真をモニター画像でみた。
E-カドヘリンは脾臓由来の間葉系細胞のリンパ球にはけっして発現しない細胞接着分子で、多能性幹細胞のマーカーとしても知られている。
この分子が発現したということは、少なくとも上皮様の細胞への変化が起こっていたことを示していた』 (『あの日』)
小保方氏は、STAP細胞の存在をいまだ信じて疑っていない。
それはまるで2014年4月9日に開かれた「STAP細胞はあります」の会見を繰り返しているかのようだ。
論文を発表し、データが疑われてから自分の身が削られるほど日本中から熱狂的に注目され続けながら、CDB内で数々のサポートを受けたにも関わらず、何もわかっていない。
そして何も変わっていない。
今回のSTAP騒動の最大の問題は、STAP細胞が別の細胞に「すり替わった」ことよりも、本質的に「再現性がなかった」ことなのだ。
しかし、若山氏への批判を繰り返す彼女はまだ、割烹着を着てピペット持って微笑む、あのときの小保方晴子氏のままだ。
『あの日』の最後はこんな言葉で締めくくる。
『不思議と今でも実験をしている夢を見る。
心はもちろんウキウキしていて、ピペットマンが押し返してくる感触を右手に感じる時すらあるのだ。
でも、その夢から覚めた時、思い描いていた研究はもうできないんだなと思うと、胸が詰まり、涙が勝手にこみ上げてくる』(『あの日』)
いや、まだ「夢」の中にいるようだ。
取材・文 山下 祐司
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