飽きさせない献立作りがカギ 極限の地で働く“南極料理人”の大いなるこだわり
『BAR de 南極料理人Mirai』のオーナーシェフ、篠原洋一氏は南極観測隊で、調理隊員を2度務めた。隊員の胃袋と心を満足させる極意を聞いた。
スポンサーリンク『調理は普段から120%の力でやろう』
南極での調理は隊員を飽きさせないために、献立は季節を意識していかにバリエーションを増やすかがカギ。
篠原氏は1日10種類、1ヶ月で約300品をアレンジして献立がかぶらないようにした。
「西オーストラリアのフリーマントルから海上自衛隊が運航する観測船『しらせ』に乗り、南極観測隊は現地に向かいます。
1年2カ月分の食材の仕入れは一度だけ。
普段の献立は献立を決めずに現地へ向かい、極力隊員のリクエストに応えられるようにしました」(篠原シェフ 以下同)
地質、気象、雪氷等の観測を行う研究部門と通信士、医師、調理師など調査を支える設営部門に分かれる。
雪と氷に囲まれた環境では、食事の内容が隊員たちの精神的な健康状態を左右する。
「調理担当の仕事は19時にひととおり済みますが、実際は早番で朝の5時から、夜は23時頃まで働いていました。
私は相方を呼んで『19時終わりだと決めないでほしい。次の日に手の込んだ料理やデザートを出すなら、その仕込みができなくなる』と言ったんです。
料理の評価は次の日にもすぐ出ます。印象に残りやすいんでしょう。
だから『調理は普段から120%の力でやろう』と伝えたら、相方も納得して頑張ってくれました」
寒さはカロリーを消費する。極寒の地で体調を維持するためには、やはり毎日のカロリー量は私たちの食事より多いのだろうか?
「外で作業を行う人と内勤の人では必要なカロリー量が違うため、メタボにならないように調整していました。
閉鎖的な空間で食べるものを制限してしまうと、飢餓感が出てがっついてしまいます。
私は3食に加えておやつや夜食など、24時間いつでも食べられる状態にしていました」