【『決してマネしないでください。』完結記念インタビュー】第1回美大出身のマンガ家が理系コメディを描いたわけ(全3回)
理系学生の間で人気沸騰のマンガ『決してマネしないでください。』(講談社)3巻が2月23日に発売。完結を記念して作者インタビューを行った。
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2月23日発売の『決してマネしないでください。(3)』(蛇蔵/講談社 税込605円)。
公式サイト:
http://morning.moae.jp/lineup/380
3巻収録17話試し読み
芥川賞作家にして複雑系の研究者でもある円城塔氏が自ら雑誌アンケートを出して継続を要望、その言葉が帯になるという、最後に熱い展開を見せた『決してマネしないでください。』。
理系あるあるネタ満載の、ツボを押さえたギャグとストーリーにファンは多い。
同マンガに私の『あぶない科学実験』を参考文献に挙げていただいた縁で、蛇蔵さんとは友達だ。
ガスの爆発圧でジャガイモを飛ばすポテトキャノンの実射をしたいと言われ、最終巻になる3巻に出てくるポテトキャノン(蛇蔵さんは芋バズーカと呼ぶが)を撃ちに行ったりした。彼女は私が店主を務める科学実験酒場の常連でもある。
蛇蔵さんに会う。蛇蔵さんは非常に面白い人で、ニューヨークに住んでいた時は向かいのビルがガス爆発で吹っ飛び、日本では地下鉄でヤクザにナンパされ……わあ! どうしたんだ! 顔が紫色じゃないか!
「転びました」
飲み屋でテキーラをおごってもらい、調子に乗って飲んでいたら、前後不覚で帰りに自転車で街路樹に突っ込んだらしい。
「だから今日は写真NGです」
何を女優みたいなことを言っているんだ。わかりました、じゃあ写真はケガする前ので。あとマンガも描いてくださいね……それにしても痛そうだな。大丈夫ですか?
「大丈夫です。口の中が痛くて、ごはん食べられないんですが」
なんか小さくなってますもんね。絶食したプラナリアみたいで面白いですね。
「マンションのカギもなくして、マンションと壁の隙間で寝ました」
……3巻の酔っ払いネタは先生の実生活でしたか。大人は決してマネしないでくださいね、と。
リトマス試験紙みたいな顔色ですけど、蛇蔵先生、しゃべれりゃいいんでしゃべってください。科学マンガを描こうと思ったのはなぜだったんです?
「元々、学習マンガをライフワークして行こうというのはあったんです。『日本人の知らない日本語』『日本人なら知っておきたい日本文学』と書いて来て、少し手を伸ばしにくい知識を簡単にエンターテイメントで届けていけば、読んでくださる方がいらっしゃるだろうと」
それで科学?
「科学史をやろうと思ったんです。大阪大学で科学史を教えていらっしゃる先生から本をいくつか借りました。
その中に『万物の尺度を求めて』と『科学の真理は永遠に不変なのだろうか―サプライズの科学史入門』があったんです」
これが面白かったと蛇蔵さん。
「普段、私たちが恩恵をあずかっていることと裏に、こんなに面白いことがあったのかと。それをぜひみなさんに伝えたいと思って。
科学といえば、勉強しなくていいやと思う方が多いと思いますが、人間ドラマだったら、どなたでも楽しんでいただけるんじゃないか?」
折しも週刊モーニングから誘いがあったため、コミックエッセイではなく、ストーリーマンガとして連載が始まることになった。
しかし科学である。
「理系に行こうと思ってたんですよ、高校までは」
それは初耳。理系に進んでいたら、今頃、STAP細胞はあります! と叫んでいそうですね。美しすぎるマッドサイエンティストって言われて。
でも美大に行ったんでしょ? 未知の世界じゃないですか。
「私にとっては日本語も日本文学史も知らないジャンルだったんです。過去の2作品に原作の方がいると思われているんですが、取材をしているのは私で、マンガに載せた内容は私が勉強した中で確認したものなんです。
勉強して取材して、原案の海野凪子先生にチェックいただいてコミックスにしているんです」
勉強して取材して書くという基本的な方法は同じ、だから何とかなる! と『決してマネしないでください。』(以下、決マネ)の連載はスタートした。