シャラポワが陽性反応。謎の薬メルドニウムとは何か? 専門家に聞く
女子テニス界の女王、マリア・シャラポワ選手がドーピングチェックで陽性反応に。シャラポワ選手が医者に処方されたというメルドニウムとは?
スポンサーリンク2016年1月1日にドーピング禁止リストが改訂され、メルドニウムも禁止薬物に指定された。シャラポワ選手は記者会見で、医者に処方された薬にメルドニウムが含まれており、知らずに飲んでいたと主張した。
日本アンチ・ドーピング機構によると<意図して医薬品を使用したわけではなくても、禁止されている物質がアスリートの体内から検出された場合には、違反を問われる>(同HP)ということなので、シャラポワ選手もオーストラリア大会への出場は辞退せざる得ないことになった。
ではメルドニウムとはどんな薬なのか? 飲むと疲労がなくなり、いくらでも動ける覚せい剤のような薬なのか? それともボディビルダーがムキムキの筋肉をつけるために摂取するたんぱく質同化ホルモンの一種なのか?
メルドニウムは心臓病の薬だ。狭心症や心筋梗塞の治療薬であり、一般にイメージするドーピング薬とは違う。薬剤師協会に聞いたところ、メルドニウムを使った競技者が見つかったためにドーピング禁止リストに加えられたのだそうだ。
ロシアのソチオリンピック金メダリスト、フィギアスケートのエカテリーナ・ボブロワがメルドニウムの陽性反応で世界選手権を欠場し、自転車競技のエドゥアルト・ヴォルガノフも同じく陽性反応で出場停止処分を受けている。
シャラポワもロシア国籍だ。つまりロシアのアスリート界ではメルドニウムの使用が恒常化していたとみていい。
「禁止リストに薬物が入る基準は複雑です。たとえばドーピング禁止リストには、単に体のむくみを取るために使う利尿剤なども含まれています。これはドーピングを隠すために使われるためです。体の中のドーピング物資を短時間で体の外へ出してしまえるからです」(関係者)
他にも興奮作用と覚せい作用があるとしてニコチンやカフェインが監視対象になっていたり、風邪薬や目薬の成分が禁止リストに載っていたり、すべてを避けると薬は一切飲めないんじゃないか? と不安になるぐらいだ。
ただし、TUE(治療目的での使用に係る除外措置)として事前に運営側へ申請すれば、禁止リスト上の薬物でも認可されることがある。
メルドニウムのような心臓に作用する薬は、心臓の収縮力をアップさせるため、アスリートは記録向上に利用できる。現役で活躍している28才のシャラポワ選手が心臓病の治療を行っていたとは思われず、明らかにドーピングだろう。
ドーピングはいわば選手生命の前借りであり、選手の寿命を大幅に縮める。社会に対する影響も大きい。選手も周囲も、ドーピングに手を出して未来をなくすようなことはやめて欲しい。
取材・文 川口 友万
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