時空を超えて偉大な芸術家ミケランジェロの体を「診察」 天才が抱えていた病が判明
偉大な人物ほど死後も人を引きつける。88歳で亡くなる数日前までハンマーを振りかざしていたミケランジェロは時を超えイタリアの医師たちを魅了した。
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これまでの研究からミケランジェロの関節に異常があり、40歳ごろから痛み出したことがたことが甥のレオナルドに宛てた手紙から判明している。
その原因として考えられていたのが痛風。血中の尿酸濃度が高くなると発症する痛風では、尿酸ナトリウム塩が結晶化して関節にとどまる。
自分の白血球が結晶を異物だと認識し、取り除こうと免疫システムが動き、炎症が起こる。
ミケランジェロの体からは、結石が繰り返し排出されていた。尿路結石は尿酸ナトリウムが固まったもので痛風の症状のひとつでもある。
1549年に甥に宛てた手紙にも尿路結石治療のために「良い医者にかかった」と記されている。だからこそミケランジェロの手の関節は痛風関節炎が原因だと考えられていた。
痛風関節炎になった指の関節は大きく膨らみ、いびつに曲がっているようにすらみえる。
丹念に左手を調べると、どの肖像画にも、手のひら部分にある中手骨や指先にある指骨の関節に痛風の関節にみられる特徴的なふくらみ、痛風関節炎はみられない。
長年、彫刻家としてハンマーを振るいノミで石を削り、手を酷使したために関節が変形した、変形関節症と「診断」した。
変形関節症では関節でクッションの役割を果たす軟骨がすり減り、痛む。晩年のミケランジェロを15年にわたり苦しめた痛みの原因は変形関節症だった。
それでも、ミケランジェロは88歳で亡くなる数日前まで、未完の遺作ロンダニーニのピエタを前にハンマーを振りかざしていたのだ。
取材・文 山下 祐司
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