スポーツエリートだけではない 部活動でもオーバートレーニング症候群になる可能性
まもなく新学期がはじまる。新1年生は部活動の選択も重要な課題だ。運動部を選んだら(諸君は)新しい環境の練習が体力に見合っているかを 是非気にかけて欲しい
スポンサーリンク注意すべきは風邪で体調を崩したとき
オーバートレーニング症候群の予防に、確実な兆候をつかみたいところだ。しかし、難しいという。それは「調子が悪い」と初期のオーバートレーニング症候群が地続きで境界があいまいで、はっきりとした自覚症状がないからだ。
スポーツ診療所を訪ねてきた選手たちの多くはコンディションが落ち始めて、1ヶ月ほど調子があがらない状態だったという。
「競技による違いや、トレーニングの強度や期間が様々なので、一概な目安は言えません。ただ、コンディションのチェックは重要です」と川原さんは話す。
川原さんが勧めるのはトレーニング日記に練習内容を記載し、運動時の調子を0~10の11段階の自己評価で記録し続けること。「大まかな傾向をみるものですが、評価の低い時期が続くと体に異変が起きているかもしれません」
特に注意すべきなのは風邪で体調を崩したとき。「風邪がきっかけでオーバートレーニング症候群になるケースが非常に多い。その場合、2つのケースが考えられます」と川原さんは指摘する。
1つはすでにトレーニングが過剰になっていて、風邪が最後の一押しになるとき。もう1つは風邪にかかる前には問題がなかったのに、風邪から完全に回復しないうちに再開するトレーニングが体にとっては強すぎるケース。これがオーバートレーニング症候群に発展する可能性がある。
オーバートレーニング症候群の治療には特別な方法はない。自覚症状がとれるまでは休養する。トレーニングを再開するときは回復力が落ちているので、十分に負荷レベルの低いトレーニングから開始し、時間をかけて増やしていくことが重要になる。
この時に心がけるのは、あくまでも回復力に注意しトレーニングを調節すること。特に軽症なら短い休息でパフォーマンスが戻ることもあるが、あくまで一時的。自分の感覚で疲労感がなくとも、回復力の回復がともなっていないので以前と同じレベルのトレーニングを実施するとパフォーマンスはすぐに低下する。選手にはこのトレーニングの抑制が難しい。
「たとえば、オーバートレーニング症候群になった長距離選手に、休養明けは軽いトレーニングからスタートと伝えます。でも、彼らの”軽い”は60分間のジョギングになるわけです。選手は十分軽いトレーニングだと思っても、身体にとって負荷が大きすぎる場合もあります。
このままなら症状は進行するだけ。このように選手と身体の認識のズレが大きいのに気づかない、それが治療を遅らせる要因のひとつです。回復という現象をしっかりイメージできないのが問題です。まずは気持ちよくできるレベルの強度と時間からトレーニングを再開します」