小保方晴子が瀬戸内寂聴と対談 STAP細胞のバトンは繋がっていた?
作家・瀬戸内寂聴の願いで実現した対談。2年ぶりに表舞台に登場した小保方晴子は真っ白なワンピースを身につけ、これまでの生活を語った。
スポンサーリンク「私はこの2年間、うつ病の治療で通院する以外ほとんど外出することができず、書店にも一度も行っていなくて、売れたという実感はまったくなにのですけれど」
『婦人公論』の6月14日号に掲載された作家・瀬戸内寂聴氏と理化学研究所の研究者だった小保方晴子氏の対談は小保方氏がこう答えてスタートする。
その姿を見せたのは、STAP細胞を発表した論文に不正があったと認定された直後に開いた2014年4月の会見以来だ。
その後、STAP細胞自体が別の細胞だったと明らかになり、STAP細胞自体がねつ造だったと判明した。当然、論文も取り下げられた。
今年の1月、小保方氏は研究生活をすべて振り返った「あの日」を出版するとたちまちベストセラーになった。
論文で不正と認定された研究は、共同研究者だった山梨大学・若山照彦教授の手によるもので、STAP細胞は存在するという考えは揺らいでいなかった。
しかし、あらゆる細胞になれる能力を持つSTAP細胞の存在は小保方氏を含めこれまでにだれも示せてはいない。
この対談は『あの日』を中心に話は展開し、瀬戸内寂聴氏が文才を褒め、小保方氏に作家になることを勧めているが、気になったのは「あなたたちの説を、引き継ぐ人はいるの?」と瀬戸内寂静氏が訪ねたときのことだ。小保方氏はこう答える。
「最近、私たちが発表したSTAPという名がついた論文が発表されました。まるですべて握りつぶされたわけではなく、バトンは繋がっていたのだなと思いました」
確かにSTAPと名のつく論文は発表された。しかし、STAP細胞の存在を示したものではない。
3月に独・ハイデルベルグ大学の教授らは「Modified STAP conditions facilitate bivalent fate decision between pluripotency and apoptosis in Jurkat T-lymphocytes」のタイトルをつけた論文を科学誌「Biochemical and Biophysical Research Communications」に発表している
この論文では、小保方氏が取り下げた論文をもとに改変した培養液を使い、細胞に「刺激」を与え、変化を調べている。
小保方論文で示されたpH5.7ではなく、pH3.3の培養液に細胞を浸すと、どの細胞にもなれる多能性の指標となるAP(アルカリフォスファターゼ)の存在が確認できた。
しかし、多能性はこの1つの指標の存在で裏づけされるわけではない。取り下げられた小保方氏らの論文でもOCT4、Nanogなど別の重要な多能性マーカーを指標に使い、その存在を示し(論文を取り下げているので存在というのもおかしなものだが)、STAP細胞の存在のストーリーを展開した。
特に、最も重要な多能性マーカー、OCT4遺伝子働きが統計学的に増加することはなかった。
小保方氏や疑惑が深まるなか、STAP細胞の存在を確認するための再現実験を進めた理化学研究所の研究者たちが、何度も言及した「光る細胞」とはOCT4遺伝子の働きを光で見てわかるようにしたもの。それほど重要な遺伝子だ。ただし、OCT4遺伝子の働きが増えたからといって「STAP細胞がみつかった」とはならない。
この論文に書かれているように、今後も問題があるとわかっていてもSTAP細胞のアイディアに魅せられる研究者は出てくるかもしれない。
しかし、長続きはしないだろうと予測させる結果でもあったのだ。
取材・文 山下 祐司
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