何を見てるかわかっちゃう? 脳波から視線を「のぞく」ソフトウェアが開発される

「目は口ほどにものを言う」とよく言うように、視線の先にはその人間の本心が現れる。 コンピューターに心を見透かされる未来は近い――?

岡真由美| Photo by Getty Images

スポンサーリンク

脳 視線
視線の先には何が?【写真:Getty Images】

 人が見ているものを、脳から得られる信号から瞬時に分析し、推測することが可能になりつつある。

 1月に「PLOSコンピュテーショナル・バイオロジー」で公開された研究論文によると、米スタンフォード大学およびワシントン大学神経外科の研究者らが、独自開発したソフトウェアプログラムを使って「何を見ているか」を推測したところ、その精度は96%に達したという。

 プログラムの開発は、人が脳の側頭葉でどのように物体を認識しているのかを調べるところからスタートした。

 実験の対象となったのは、シアトルにあるハーバービュー医療センターで治療を受けている、7人のてんかん患者である。

 患者はいずれも薬では症状が改善しなかったため、発作の発生源を見つけるために、一時的(約1週間)に側頭葉に電極を埋め込まれた状態だった。したがって実験のためにわざわざ脳に電極を埋め込んだわけではない。

 側頭葉は知覚(聴覚、視覚、嗅覚、触覚など)を処理するとされ、側頭葉てんかんは高齢者に多いてんかんとして知られる。

 実験では、側頭葉の複数個所に埋め込まれた電極をコンピューターにつなぎ、脳から発せられる信号のうち「イベント関連の電位」と「広帯域スペクトル変化」を抽出した。

 研究チームによると、画像を見ると膨大な数のニューロンが同時活性化するためイベント関連の電位が上昇、また最初の情報の波が過ぎたあとも情報を継続処理するために広帯域スペクトルが変化するのだという。

 被験者はコンピューターモニター上で一連の写真をバラバラな順番で一瞬だけ見せられる(表示時間は400ミリ秒)。

 見せられるのは複数の顔写真と家の写真で、写真と写真の間にはグレーのブランクの画面が挿入された。

 実験の結果、電極の位置(脳の部位)によって、写真への反応が異なることがわかった。
 
 顔に高い反応を示す部位と、家に高い反応を示す部位があったという。

 研究者らはこうしたデータをもとに、写真全体の3分の2に対する被験者の反応を分析したあとで、残り3分の1について、被験者が何を見ているかを推測する実験を行った。

 その結果、96%の確率で、被験者が家を見ているのか、顔を見ているのか、グレーのブランクの画面を見ているのかを20ミリ秒以内で当てることができた。

 今後研究がさらに進めば、脳のどの部分がどんな情報に敏感に反応するのかを示す「脳マッピング」が実現するという。

 将来的にはウソ発見器どころか、何を考えているか全て見透かされるかもしれない。

取材・文 岡 真由美

【了】

PAGE TOP ↑