見られるか見られないかは分からない 寄り目が必須の展覧会が不思議 

東京・清澄白河のギャラリー無人島プロダクションで、八木良太さんの個展が開催されている。新作のテーマは「考古学」だ。

石水典子| Photo by Noriko Ishimizu

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え! 人によっては作品が見えないの!?

考古学
八木良太展「メタ考古学」【撮影:石水典子】

 3つの石碑のような作品は、鑑賞者が裸眼立体視交差法で見る必要がある。

 一見ノイズのような画面だが、ランダム・ドット・ステレオグラムという手法を使っており、立体視すると、イタリアの世界遺産、ヴァルカモニカの岩絵などが、浮かびがあってくる。

 ランダム・ドット・ステレオグラムとは、寄り目などをして意図的に目の焦点の位置をずらすと、3Dのように飛び出して見える絵のこと。

 二つの目はそれぞれ感知している画に差異があり、その違いから脳は空間把握し、再構築されたものを今見ている画像として人は認識している。

 裸眼立体視は特殊な眼鏡などの道具を使わずに、その視覚の構造を利用した方法だ。

 必死で寄り目をしたのだが、筆者は立体視ができずどれも見られなかった…。何も浮かび上がってこないんですけど…。

 立体視はすぐにできる人もいるし、なかなかできない人でも練習するとできるようになるらしい。作家が用意したテキストが参考になる。

(八木良太公式HP「作品鑑賞のてびき」より)

 でもこれでは、作品を見られる人と見られない人が出てきてしまうが、それでいいのだろうか?

「この展覧会を開催して思ったことですが、人は『見る』ということを他人とシェアするのは意外と難しいということです。

 同じものを見ているはずでも、それを『見ている、見えている』ということをお互いに確認するためには結局言葉を使います。

 一瞬見ただけでは見えなかったり、すぐに見える人がいたり、じっと見ると見えてくる人もいればいつまでも見えない人もいる。そこには確かに個人差があります。

 けれども、『見る』とはどういったことか、私たちは何を見ているのか、『見えた、見えない』ということよりも『見る』という行為についてあらためて意識してもらえたらな、と思います。
 
 あと私も今回の展覧会で初めて裸眼立体視にチャレンジしましたが、普段使っていない部分の筋肉を使って立体視ができたとき、自分の身体をひとつ発掘できた気分にもなりました」

 他には、ランダム・ドット・ステレオグラムを使った砂嵐が流れるブラウン管テレビや、縄文土器に見立てた焼き物をギターピックでこすって音を聴く作品(試作品)などがある。

 時間や音を鑑賞者が発掘する作品群。体験して初めて現れる不思議な感覚を体験しに、訪れてみてはいかがだろうか?

□関連情報
八木良太展「メタ考古学」
会期:2016年5月21日(土)~6月26日(日)
会場:無人島プロダクション
Open:火~金|12:00-20:00 / 土・日|11:00-19:00
〒135-0022 東京都江東区三好2-12-6
tel. 03-6458-8225
公式HP:http://www.mujin-to.com/

取材・文 石水 典子

【了】

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