ダイエットで制限すべきは糖質か脂質か? その決め手はあの「伝説の健康飲料」【おかしな科学】

世のニセ科学をぶった切る『おかしな科学―みんながはまる、いい話コワい話 』(楽工社)の共著者で、疑似科学バスターのロッポンギヒロユキが世間のウソを見破ります。

ロッポンギ ヒロユキ| Photo by PAKUTASO,Getty Images

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忘却の古井戸から這い出した健康飲料! 「コンブチャ」の正体

キノコ
モデルやセレブの皆さんはみんな飲んでる?? コンブチャとは…?

 そんなわけで、ダイエットの決め手になるのが腸内フローラであるというところまで辿り着きました。

 ネットで「腸内フローラ ダイエット」と検索すればいろいろな商品が出てきます。「菌活」というワードも人気で、ヨーグルトをはじめ乳酸菌や酵母などが並んでいますが、中も目を引くのがこれ

 モデルの山田優さん愛用の「コンブチャ」です。いまや藤原紀香さんイチオシの「水素水」を押しのけて注目度ナンバー1! と勝手に認定させていただきます。

 すでにご存じの方も多いとは思いますが念のため説明すると、このコンブチャなる飲み物、ルノワールでおなじみの昆布茶ではありません。その正体は何かと言えば、1975年ごろに大流行した「紅茶キノコ」。

 日本ではとっくの昔にブームが去ったものが、いつの間にか欧米に上陸してオシャレな健康食品に様変わり。しかもなぜか名前が「コンブチャ」になって日本凱旋を果たしたという代物です。

キノコ
久々に見てもやっぱりグロい
【写真:Getty Images】

 ブームになった当時はあちこちの家庭で培養されていました。大きなビンとか甕の中にぷかぷか浮かぶ謎の物体。結構グロテスクですけど、みんな健康にいいからって飲んだり食べてたりしたらしいです。

 まあ、わが家は近所の親戚がシイタケの栽培してるくらいなので、わざわざマガイモノのキノコ(?)に手は出しませんでしたが、やっぱりどう考えてもグロいですよね、呪術的宗教の入信儀礼なんかに使われそうなくらい。

 ところがその紅茶キノコは、40年の時を超えて欧米セレブの間で「腸内環境を整えてくれる発酵飲料」として大人気になっているのです。

 デトックスだの脂肪燃焼だのって効果があると言われています。でもそのうち、来日セレブがルノワールで昆布茶を頼んで、「こんなのはコンブチャじゃない!」と騒ぎにならないか心配です。大丈夫でしょうか、ルノワールさん?

 ちなみに「紅茶キノコ」の中に浮いている謎の物体、一見キノコのようですがキノコではありません。じゃあ何かと言えばセルロースゲルのかたまり。大量の砂糖を混ぜた紅茶や緑茶の中で培養された酢酸菌が作る物質で、ナタデココと同様の物質だとか。

 ここで気になる単語が出てきましたね……「酢酸菌」。最初の研究で、インスリンを分泌させてデブ化を促す悪の元凶と指摘されたのが「酢酸」です。

 紅茶キノコも酢酸菌の作用で酢酸が賛成されますが、今度は腸内環境を整える善玉としての登場です。善か、悪か、果たしてその正体はどちらでしょう?

 というわけで、国立健康・栄養研究所のホームページで「『健康食品』の安全性・有効性情報」を調べてみました。

「月経前症候群によい」とか「免疫力賦活作用がある」とされていますが、「ヒトでの有効性については調べた文献に十分なデータが見当たらない」とのこと。

 さらに、「自家製紅茶キノコで微生物や重金属の混入を原因とする健康被害も発生しているため、注意が必要」とあります。

 結論をいえば、お腹をこわして痩せるくらいはありそう、ってところでしょうか。

取材・文 ロッポンギ ヒロユキ

【了】

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