顔の「ある」印象が当落を決める? 選挙前に読んでおきたい投票のサイエンス

参議院選挙の目前。まだ、だれに投票しようか迷っている人もいるだろう。そこで選挙の科学の登場だ。

山下祐司| Photo by Getty Images

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選挙
あなたは何を基準に投票先を決めますか【写真:Getty Images】

 7月10日は参議院選挙の投票日。各紙の世論調査をみると、自民党と公明党の与党が改選議席の過半数を超えてとる勢いで、改憲をめざす政党の議席を合わせると憲法改正の発議に必要な3分の2の議席に届くかどうかに注目が集まる。

 選挙年齢が18歳に引き下げられてはじめての選挙のため感心も高い。

 あなたは何を基準に投票先を決めますか。景気、雇用、労働、教育、医療、福祉、年金、環境、外交などの政策を比較する。

 それとも候補者の人柄やこれまでの言動から判断する。または、政党のかかげるイメージか。いや、実は候補者の顔でなんとなしに決めていませんか。

 米・プリンストン大学のアレクサンダー・トドロフ教授らが2005年に米科学誌『Science』に発表したのは投票そのものに警笛を鳴らす内容だった。それは候補者の顔の「ある」印象で当落を予想できるというものだった。わかりづらいので簡単に説明しよう。

 教授らは米国の上院、下院選挙で対立する2人の候補者の顔写真を実験の参加者に見せ、写真から受ける印象を調査。

 そして、実際の選挙結果から当選する候補者が与える印象の中から、当選と結びつくものを調べた。参加者に与えられたのは候補者の情報は写真のみで、通常の選挙であれば参考にする所属政党や政策、人となりなどの情報は一切提供されていない。

 見た目から受ける「有能さ」「信頼感」「誠実さ」「リーダーシップ」「知性」「カリスマ性」「好ましさ」などの印象からから、唯一、より「有能」だと思われた候補者が多く当選していた。

 さらに、この相関性はたった1秒写真を見るだけで十分だった。トドロフ教授らは100分の1秒みせるだけでも同様の結果を得ていると2007年に発表している。

 つまり、選挙では色々考えたりせず、わずかの時間だけ顔を見て「有能そう」と感じた人に投票しているだけかもしれないのだ。

 もちろん、この結果から顔の印象だけで本当に選挙結果が決まるとも、誰もが深く考えず投票しているとも言えない。

 しかし、投票箱に投票用紙を入れるまえに、本当に考えて決めた候補者なのか、自分の行動をあらためて振り返るきっかけになるような結果は提示してくれているのだ。

取材・文 山下祐司

【了】

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