4万5千年前の北極圏に、人の痕跡みつかる。 マンモスの傷から判明

これまでより1万年も早く、北極圏に人類が進出していた可能性が示された。ロシアの研究チームが凍土から発掘したマンモスの骨を調べたところ、人が作った道具で傷ついていたことが判明したのだ……。

山下祐司| Photo by Getty Images

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人間の歴史はもっと長いのかもしれない【写真:Getty Images】

 4万5千年前の北極圏に、人のいた痕跡がみつかった。 ロシアの研究チームが凍土から発掘したマンモスの骨を調べたところ、人が作った道具で傷ついていたことが判明。

 この驚くべき研究結果を15日に米科学誌「Science」に発表した。これまでより1万年も早く、北極圏に人類が進出していた可能性を示したのだ。 

 2012年8月、北極海に面するロシア・シベリアのyenisei湾にある断崖から一頭のケナガマンモスが発見された。慣例に従って、発見された地名からSopochnaya Kargaと名づけられたこのマンモスは高さ約1.8m、全長2.9mで1.6mの牙をもつ15才のオス。

 保存状態は非常によく、骨は完全な形で発掘された。また、柔らかい組織、例えば、盛り上がった肩のコブや生殖器も残っていた。放射性炭素による年代測定を行うと45000年前のマンモスだと判明した。

 Vladimir V. PitulkoやAlexei N. Tikhonovらからなるロシアの研究チームがこのマンモスの骨を調べると複数の“不自然“な傷がみつかった。

 左のほほ骨にあった傷は比較的シャープに削られていた。CTで傷を細かく分析すると、最も長いところで5.1mm、短いところで3.4mmの長さがあった。対称的な形で、その部分だけに目を向けると矢尻のような形に見える。

 左の肩甲骨には少なくとも3ヶ所の傷が残り、そのうち2ヶ所は肩の最も高いところにあった。そこは武器を使わないと届かない場所だった。おそらく1.5mほどの高さにあったもう1ヶ所の傷は、最も印象的。

 まるで力を込めて槍を突き刺したように、肩甲骨は曲がり、空洞が生じて骨は裂けていた。更に、左右のろっ骨にも切りつけられたような傷があった。
 
 Sopochnaya Kargaマンモスの骨には死後につけられた傷もあった。非常に頑丈な下あごの一部が破壊されていた。そして、右側に一本残った1.6mの牙の先には、薄くそぐように削り取られた跡が残る。長く薄く、鋭いブレードのような道具を手に入れるためについた傷だ。

 ロシアのチームは同時期のオオカミの骨からもシャープな武器を使った痕跡をみつけている。

 数万年前にアフリカを出た人は、氷河期に陸続きとなったベーリング海をわたり、アメリカ大陸に入ったと考えられている。
 
 ロシアの研究から、1万年早い北極圏への進出により、氷河期に入るより前に人が“新大陸”に到達した可能性が出てきた。

 今後、人類の移動の歴史が大きく変わるかもしれない。

取材・文 山下祐司

【了】

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