地球にとって温暖化を超える影響力!?【明らかになる生物多様性のもつ役割 02】
地球にとって最大のリスクのひとつは気候変動による温暖化と考えられがち。しかし、 生物多様性が地球環境に与えるインパクトもひけをとらず大きい。温暖化対策に遅れをとっていたが、多様性を守る国際的な取組がスタートしている。
スポンサーリンク生物減少を食い止める取り組みと課題
南米・コスタリカは、国土の約38%を熱帯雨林がしめる自然が豊かな国。コスタリカのコーヒー農園は、熱帯雨林を切り開いて造られた。そのため、所々に熱帯雨林の一部が残っている。この熱帯雨林に住んでいる多様な生物が、人に利益をもたらす。
コーヒー農園に隣接する、熱帯雨林に住む10種の野生のハチは、餌を探しながらコーヒーの受粉を促す。コーヒーの生産性が20%増加し、コーヒー豆の品質も向上していた。ハチによる受粉は、1年で約6万2千ドルの収入増に結びつき、その農園の収入約7%にあたっていた。
同じように、一部にだけ残った熱帯雨林を住みかとする鳥は、コーヒーの害虫を食べて収量をアップさせていた。少なくとも75種類の鳥が害虫をついばみ、1年で最高9400ドルの価値があると報告されている。
しかし、生物多様性の減少には歯止めがかかっていない。2000年から2005年の5年間で、陸地の約1.4%の面積にあたる熱帯雨林が伐採された。この面積の約47.8%が、ブラジル、12.8%がインドネシアの熱帯林だと推定されている。
カナダのダルハウジー大学のキャミロ・ローラらのチームは、2011年に地球上にいる生物種は、870万種だと試算。国際自然保護連合は、登録した79,837種を評価したところ、23,250種、約3割に絶滅の恐れがあると発表している。
生物多様性やその機能を守るために、生態系に起こっている現状や変化を科学的に評価し、それを的確に政策に反映させるための国際的な取組として、生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)が2012年に設立され、現在123カ国が参加している。
生物多様性版IPCCとも表現される。IPBESのメンバーも務めている森准教授は語る。
「生物多様性の意義を広く発信することで、気候変動の分野におけるIPCC同様に、広く政策に貢献することが期待されています。
日本を含む世界中の地域・国々において、生物多様性の保全が実際の利益に結びつくことを含めて、実社会で意義のあることだと認知され、政策にも反映されるように、IPBESの活動に貢献していきたい」
取材・文 山下 祐司
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