今年の科学はこれだ! ニュートンが35年も愛されてきた理由 【ニュートン編集部が大予想! 01】
1981年の創刊以来、一般向け科学雑誌のトップランナーとして不動の地位を築いている『ニュートン』編集部に今年の科学動向を教えてもらった。
スポンサーリンク震災には科学的事実で向き合った
「ここ5年くらいでいうと一番反響が大きかったのが震災直後の〝地震のメカニズム〟などを特集したものです。
あの地震がどうやって起きたかというのをやりまして、そのときは予定していた記事をすべて飛ばしました。
その次の号では原発を取り上げたんですが、本当は30周年記念号の予定だったんです。
2号連続で〝大宇宙〟という特集をやろうとしていたんです。
一つは『宇』の章。宇宙の『宇』は空間的広がりを意味します。
そこで太陽系から宇宙の果てまで、宇宙の空間的な広がり全体を取り上げました。
徐々に遠くに行きつつ、いろんな天体を紹介していったわけです。
その翌号が『宙』の章。『宙』には、時間的広がりすべてという意味があるらしい。
そこで、宇宙の始まりから超未来、終わりまで時間的広がり全部を取り上げる。
その二つそろえば時間的広がり空間的広がりを網羅しますよ、というのを企画して進めていたんです」
――それが地震で……。
「大震災がありましたので、ちょっとそんなことやってる場合じゃないだろうと。
予定をずらしまして、震災直後の号には細かい記事も全部飛ばして、丸々地震の記事にしました。
それが最近では一番大きく売れた号ですね。
その震災特集号が書店レベルでも大きなインパクトがあったみたいで。
今は無いんですけど、当時は雑誌の編集長と書店員がその半年でインパクトのあった雑誌の号を選ぶ「雑誌大賞」というのがありまして、そこで準グランプリを頂いたんですよ」
――すごいな、それ。
「全雑誌でですよ?「AERA」とか「週刊文春」とかファッション雑誌なんかも諸々含めて、なぜか科学雑誌が入っていて」
――記事の何が良かったんでしょう?
「私たちはジャーナリズム雑誌ではないという立場なんですね。なので、批判はしない。
淡々と科学的事実だと思われることを、淡々と紹介しようということを普段から心がけています。
震災の時も原発事故の時も、東電がどうこうとか誰に責任があるのかというのは他のメディアに任せておこうと。
とにかく、何が起きたのか。
そもそも原発ってどんな仕組みなのか? 事故の原因、放射性物質の崩壊ってどういうことか、とかですね、それをきちんと伝えようと考えていました。
肯定派否定派ではっきり分かれて、どれを信じればいいの? という時に、ニュートンはどちらの立場もとらないで、比較的淡々と、誰を批判するでもなく誰を擁護するでもなくというスタンスをとっていました。
どの雑誌も、あの時は震災を扱っていたと思うんですけど、実はそういう立場の雑誌が少なかったんだと思います」
取材・文 川口 友万
【02につづく】