通説“シマウマのしま模様はカモフラージュになる”に異論。ライオン目線で再現すると?

“シマウマ”のしま模様は過酷なサバンナで身を隠すのに有効に働くと考えられてきが、昨今の研究で意外な事実が判明した。

山下祐司| Photo by Getty Images,Zebra Stripes through the Eyes of Their Predators, Zebras, and Humans

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「あれ? 見えてない?」ライオン目線を再現

 研究チームはライオンの「視点」を画像処理によって作り上げ、この難題に取り組んだ。同じほ乳類とはいえ、夜行性のライオンの視点はヒトと大きく違う。

 ネコ科のライオンの視線を再現するためネコの見え方を参考にした。

しまうま
(図1)

 ライオンは、視力検査で調べるように離れた距離を認識できる分解能力と、明暗のメリハリであるコントラストを認識する能力がヒトよりも低い。

 また、光を受け取る眼の網膜にある細胞の種類が少ないので、ヒトと比べると緑がかって見えている。

 同じようにシマウマを狙うネコ科のハイエナや、ウマを参考にシマウマの視点を再現すると(図1)のようになった。

しまうま
(図2)

 

 ヒト以外の動物の「眼」を通すとシマウマはぼやけ、しま模様もはっきりしなくなる。

 この画像の設定は、シマウマのしま模様が最もくっきりと見える昼間で、たった9mしか離れていない。

 しかも、16m離れたところからライオンの視点で、昼、夕方、夜と草原にいるシマウマを見てもシマシマに何の効果があるのかさっぱりわからない(図2)。むしろ、しま模様のおかげで目立っている。

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図3-1

しまうま
図3-2

 
 シマウマの群れを見たり、アフリカの草原によくいるウシ科のトピと並べたり(図3-1)、ウォーターバック、インパラと比べてみても、しま模様の利点は全く見えてこない(図3―2)。

 これらの画像も9m離れたところからの視線。

 ライオンが狩りで狙うように、もっと遠くからライオン目線でシマウマを見ると白黒のしま模様の存在さえ判別できなくなる。

 唯一、このシマウマのしましま模様が役立つのが林にいるとき(図4)。

 ただし、こちらもライオンが狙いを定める距離では、しま模様と「しまなし」との区別はつかなくなる。

 論文では、シマウマはほとんど草原で暮らすので、しま模様のカモフラージュ効果は小さいと主張している。 

しまうま
図4
【図1~4は全て「Zebra Stripes through the Eyes of Their Predators, Zebras, and Humans」の画像をCCライセンスのもと改編

 共同研究者の九州大学大学院の平松千尋助教は、この論文だけでシマウマのしま模様に、カモフラージュの役割が全くないとは言い切れないと言う。

「ただ、人の思い込みじゃなく、動物の目を通すとヒトの考えと違って見えたのは重要な点です」と説明する。
 
「ヒトは自分も他人も同じ世界を見ていると思い込みがちです。

 でも、実際はヒトにも色覚の違いなどの個人差があります。

 思い込んだまま話すと、コミュニケーションに失敗する可能性もあります。見方の違いを頭の隅にでも入れておけば、他の人の理解にもつながるでしょう」(平松助教)

 さて、「なんで、シマウマはしましま模様なの」と聞かれたらどう答えればいいだろうか。

 どんなしま模様が見えたのか、聞き返すところからスタートだ。

取材・文 山下 祐司

【了】

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