不妊男性に朗報か! 皮膚細胞から精子の生成が可能に
科学者らが培養皿でつくった精子から、健康で生殖能力を持つマウスを誕生させた。将来、不妊の男性も血のつながった子供を持てるようになるかもしれない。
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科学者たちは実験室でマウスの胚性幹細胞(ES細胞)から生きたマウスの精子を作り出した。そしてこの精子細胞によってマウスの卵子を体外受精させ、健康な生殖能力を持つ子マウスを誕生させることに成功。
この子マウスたちはさらに自然な形で妊娠し、子供を産むことができた。
不妊治療のために男性の皮膚細胞に由来する幹細胞を使い、自分の精子を作るアイディアは長いこと研究されている。今回の結果はこの流れを後押しすると専門家たちは見ている。
過去にも胚幹細胞や皮膚細胞由来のiPS細胞から精子細胞を生成したという報告はあったが、精子と卵子が受精し健康な子マウスの誕生に成功したのは、初のケースである。
研究を行った中国の南京医科大学のジアハオ・シャ教授は
「我々は精子と同様な機能を果たす細胞を、段階的かつ安定した培養方法でつくるアプローチを確立した。
我々の手法は、生殖生物学者委員会が最近提案した倫理基準を完全に満たしている。非常に有望な男性不妊治療になる」と述べている。
実験でつくられた精子細胞はマウスのES細胞に由来するが、成人の皮膚細胞に由来する幹細胞からも同様の手法によって、精子細胞が生成できる可能性があるという。
これまで試験管内での精子細胞の生成は、非常に困難とされてきた。
精子細胞も卵子細胞同様、ヒトの場合46の染色体(マウスでは40)を減数分裂させ、染色体数を半分の23(マウスなら20)にする、複雑な2段階のプロセスを経る必要があるためだ。
シャ教授らは、マウスの精巣から採取した細胞浮遊液でマウスの胚幹細胞を培養し、体内の精子製造工程と同じ環境を作り出した。
このアプローチによって始原生殖細胞と呼ばれる細胞を精原細胞(未成熟な精子細胞)へと転換しそこから精子細胞を生成、これを卵子細胞に直接注入して体外受精を行い、健康な子マウスを誕生させた。
「セル・ステムセル」誌に掲載されたこの研究結果によれば、この子マウスたちは生殖能力を持ち、自然な形で妊娠、さらに子マウスを生むことができたという。
「ヒトでも安全かつ有効であることが証明されれば、我々の手法によって完全な精子を生成し、人工授精や体外受精に役立てられる。
現在の治療法ではうまくいかないカップルが多いので、この手法が男性不妊の治療の成功率を大幅に引き上げられたらと願っている」(シャ教授)
ケア・ファータリティ・グループ(英ノッティンガム)のサイモン・フィッシェル教授は「長期的には可能性の道を示している、エキサイティングな研究だ。しかしオプションとして検討する前に、生殖の安全性を確立することがカギとなる」と述べている。
翻訳・岡 真由美
【了】
(※)本記事はINDEPENDENT紙との独占契約により、記事全文を翻訳しております。