【食べる科学実験】ヘビは本当に効くのか? 精力ムキムキ伝説を調査(前編)

蛇は精力に良いと昔から言われている。本当に蛇は効くのか? ただのイメージ、ゲテモノ食べるオレすごい、じゃないのか? 調べてみた。

川口友万| Photo by Tomokazu Kawaguchi|シリーズ:食べる科学実験

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明治17年創業の漢方問屋へ行く

蛇
蛇善
〒111-0051 東京都台東区蔵前4-1-2
営業時間 9:00~18:00
info@hebizen.co.jp
【写真:川口友万】

 マムシでビンビン! 昔から、マムシやハブといった蛇はスタミナがつくと言われている。

 蛇料理を出す店は今も都内に数軒あるが、1950~60年代の蛇料理ブームでは、至るところで蛇を調理していた。

 伝説のプロレスラー、力道山も蛇料理屋を経営し、マムシ酒をベースにしたオリジナルの薬用酒を愛飲していたという。

 10年ほど前まで、東京には酒造メーカーの陶々酒(マムシ酒をベースとした薬用酒を販売)が経営する蛇料理専門のレストラン『マムレストラン・亜奈』もあり、店の常連客が中心になって『マム会』なる蛇料理愛好会も作られていた。

 蛇は本当に効くのか? 強壮薬としてのマムシは古くから知られ、平安時代の文献にすでにその名前が出ている。

 まったく効かなければ、現代まで残るわけもないだろうとは思う。

 しかしタンパク質が不足していた過去の日本ならいざ知らず、動物にそれほど有効な成分が含まれるものなのだろうか? 単に物珍しいの食べたという自己暗示で、気持ちがパワフルになるだけないのか?

 東京・蔵前にある『蛇善』は黒焼きの専門店。黒焼きというのは、炭を焼く要領で生物を炭化させたもの。

 黒焼きは生物の水分が抜けて有用成分が濃縮されるため、今でいうサプリメントのようなものとして使われてきた。

 あくまで民間療法で、医療の発達によってほとんどは姿を消した。わずかに残った黒焼き専門店の1つが蛇善なのだ。

 蛇善の店内には飲食スペースもあり、ちゃんと営業許可も取ってある。若旦那が捌いて、蛇料理を出している。蛇のイートインコーナーである。

蛇
販売は黒焼きが主。最近は中国人観光客がドサッとお買い上げに!
【写真:川口友万】

 せっかくなので、魔女の叶ここさんを誘う。叶さんは祖父がスペイン人の魔術師という血筋で、本人も生業は占い師。

「蛇? かわいい! 飼いたいんですよ」

 いや食べに行くんだけど。

「蛇を? 食べますよ~」

 話が早くてよろしい。

 薬用としての蛇は、酒に漬けるか、黒焼き・蒸焼にするか、そのまま食べるかだ。

 漢方でいう蒸焼は中華料理などの蒸焼とは違い、カラカラになるまで乾燥させることをいう。釜で焼いて水分を飛ばす。黒焼は炭焼きと同じ要領で肉を炭に変えてしまう。

 蛇善の若旦那に話を聞く。

「生のモノを蒸し焼きにすると7分の1から8分の1に、黒焼きにするとさらにその5分の1ぐらいでしょうか。マムシ1匹80グラムが18グラムになる」

 マムシの内臓と皮を抜いたものが漢方薬の反鼻(はんぴ)で、こちらは天日干しだ。マムシドリンクによく使われている反鼻チンキや反鼻エキスはこれをアルコールに漬けて成分を抽出したもの。

「反鼻は尿管結石など結石に効くと買って行かれる方が多いです」

蛇
モグラの干物。これも黒焼きになる
【写真:川口友万】

 黒焼きと蒸焼では効果が違うのか?

「黒焼きは化学的には炭です。炭素です。マムシでも何でも炭です。しかし竹炭と備長炭が違うように、元が何かによって違います。うちで一番売れているのはカタツムリの黒焼きでモグラの黒焼きもよく売れます」

 モグラ? 本当だ、モグラが置いてある。

 カタツムリは医学的に尿たんぱくを止める作用があり、腎臓に効く。モグラは体を温め、痔に効くと言われている。

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