年老いた自分を体験せよ! 見た目がトロンスーツなロボジー開発
「Genworth R70iエイジング・エクペリエンス」は、高齢者が日々実感している筋肉の衰えや聴力、視力の低下などを体感できるスーツだ。
スポンサーリンク人々の寿命が延び、先進国では高齢者が人口に占める割合が増えているものの、老後の具体的な人生設計を先送りにしている人は多い。
そこで実際に年を取るとどうなるのかを体感することで、どのように年を取り、生活したいのかを真剣に考えるきっかけにしたいというのが、同スーツを開発した米Genworthの狙いだという。同社はアメリカの大手保険会社である。
R70iは、主にエレクトロニクス企業向けにデザインや研究開発、コンサルティングを行う米Applied Mindsとの提携により共同開発された。脚、腕に沿ったメタルフレームとバックパック、ヘッドギアとで構成されている。
肩やひじ、ひざなどの関節部分には電子ブレーキが取り付けられており、センサーとソフトウェアによって関節の動きを制限できるようになっている。
例えば抵抗を強くして動きを制限すると、着用者は関節炎や筋肉低下に悩む人と同じような手と脚の動きしかできなくなる。
ヘッドギアにはAR(拡張現実)ビジョンシステムが採用され、着用者は加工された映像を見ることになる。例えば視野の一部が見えなくなる緑内障、視界が白っぽくなる白内障、視界に糸くずのようなものが見える飛蚊症などの症状が体感できる。
またヘッドフォンとマイクロフォンは、聴覚低下や耳鳴、失語症と同様の症状を体験するよう調整可能となっている。
例えば失語症のシミュレーションの場合、ヘッドフォンから入ってくる音が二重に聴こえて聴き取りにくくなり、かつマイクロフォンを通じて発せられる音声が実際しゃべっている速度よりも遅れて伝えられるという仕組みだ。
動画:A Closer Look At The Genworth R70i Aging Experience. Genworth
背中に担ぐリュックサックには、スーツの各部品を制御する電子コンピュータシステムとパワーシステムが内蔵されている。一回の充電で最長1時間までの着用が可能だ。
誰もがいずれは年を取り、身体が不自由になる。その「不自由さ」を今体験すれば、高齢者のいらだちや悲しみが理解でき、もっと思いやりをもって接することができるのではないだろうか。
取材・文 岡 真由美
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