【食べる科学実験】第2回 NHK『ガッテン!』、電気肉の元祖を取材する(全3回)
4月27日(水)、NHK『ガッテン!』で電気肉が取り上げられる。麻布大学獣医学部・食品科学研究室の坂田亮一教授の取材に、野次馬で参加した。
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電気を通した胸肉は研究室の調理台で火を通す。考えてみれば、このラフな形の電気肉は坂田先生も初めて食べるのだ。
「肉の繊維がやわらかくなっていますね。うん、おいしくなっています」
電気を流すと、筋肉のエネルギー源であるATPがイノシン酸に分解される。
カツオなどのうまみ成分として知られるイノシン酸は肉が熟成した結果として増えるので、電気肉は味が濃くうまくなる。同時に死後硬直が強制的に終了させられるために、肉自体は軟らかくなる。
では電気を流すとなぜATPが最終分解物のイノシン酸まで行き着くのかというと、今ひとつわからない。
電気により筋肉が見えないレベルで収縮、ATPを消費し尽すというのが、もっともな説ではあるのだが、直観的に違う感じもする。
電気ウナギは、ATPを分解して電気を発生させている。じゃあ反対に、電気肉のように電気を与えたらATPが合成されてしまうんじゃないのか?
電気肉の実験をしていると、しょっちゅう感電するのだが、感電した後はひどく疲れる。
電気ウナギも電気を出すと疲れてしまうらしい。電気をもらうのと出すのでは方向は真反対だが、なぜかどちらもATPが消費されてしまう。
脳から筋肉を縮ませるように指示が出ると、筋小胞体からカルシウムイオンが放出され、筋肉の収縮を阻害しているトロポリンという物質と結合する。
その結果、筋肉は収縮する。死後硬直は、死んで筋小胞体がカルシウムイオンの回収ができなくなったために、筋肉が収縮しっぱなしになった状態だ。
筋肉を動かす燃料となっているのはATPだ。収縮しっぱなしだとATPはいずれ尽きる。それが熟成。その後、タンパク質分解酵素の働きで肉はどんどん分解され、さらにうま味が増えていく。
ATPの合成には電気が必要だ。微弱な電流を流すと細胞内でATPは合成される(これを利用し、微弱電流によって骨折やケガの治りを早くする研究も進んでいる)。
強い電気がATPを分解すると考えるとわかりやすいのだが、そういう論文が見つからない。
「また研究して見なきゃいかんかなあ」
そうですね、もしかしたらわかっていない現象があるかもしれませんしね。
取材・文 川口 友万
【最終回に続く】