防災科研が熊本地震の緊急報告を開催 【第2回】阿蘇山の火山活動は活発化していない
4月24日に行われた緊急報告で、同研究所の火山防災研究部門・棚田收部門長は観測データから地震後の阿蘇山の火山活動について説明した。
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さらに2014年7月から現在までの長期間の震幅を提示し、断続的に噴火していた2014年11月25日から2015年5月21日までの震幅と比較(図2)。
現在の震幅を見ると当時の半分以下にまで低下。「阿蘇山が連続的に小規模な噴火を続けています。そこから考えると今すぐ阿蘇山の活動が高くなるデータではない」と解説した。
火山が活発化すると変わるのが斜面の傾き。マグマの上昇などで山が膨らむからだ。この傾きの変化を計測する傾斜計の数値も熊本地震後にも安定している。
ただ、計測器が有感地震の影響を受けやすく、火山活動に関連する数値を抽出して分析するにはもう少し時間が必要になるという。
阿蘇山がマグマで膨らめば、山の傾きだけでなく観測点間の距離も伸長する。この距離の変化を調べるにはGPFと高い精度の測定が可能な人工衛星を使ったGNSSを使っている。
4つの観測点を使って2点間の距離を示し(図3)「たとえば2011年に噴火した霧島新燃岳ならおよそ半年かかって2点間の距離が増えています。
マグマを蓄積していたわけです。GNSSの計算は速報値の値を用いたものだが、マグマの増加に伴う距離の伸びはみられず、マグマの蓄積をとらえるような変化は現在のところ見られない」と語った。
今後は火山灰や噴石を集めて化学分析しマグマの状況を調べる必要があり、シミュレーション研究も進めているという。
取材・文 山下 祐司
【第3回に続く】
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