商業主義からアートへの視線 「CreativeAdventure」

出展者にアーティストが1人もいない? 東京・鮫洲でメディアートの展示会「CreativeAdventure(クリエイティブアドベンチャー)」が開催中だ。

川口友万| Photo by Tomokazu Kawaguchi

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アート
グーグルのストリートビューの中を歩く? 『Indoor Street』
【写真:川口友万】

 メディアアートはテクノロジーが主導するアートだ。研究室で試験的に開発されたデバイスは、しかしそれ自体がすでにアートだと言える。

 プロジェクションマッピングのように、商品や広告として先に世に出たものがその後でアートの対象になった場合、イベント企画会社の製作チームが最初に作った作品は、商業作品なのか、それともアートなのか?

 「CreativeAdventure」は、メディアアートが本質的に孕む、商業主義とアート、研究とアートの間の不安定さを逆手にとり、商業的なクリエイターがアート作品を作るという、不埒な挑戦を行っている。

 今回の展示を企画した林田朋也氏。作家のための情報メディア『Creators at Work』 の編集長を務めている。

「同じ人に見ていただくものを作っているのに、一方は広告で一方は美術なんですね」

 しかし、歴史的には違ったと林田氏。

「明治の最初の頃、日本の洋画の歴史と広告の歴史はつながっているんです。今、美術と広告の両方の業界はまったく別になっている。

 なぜこういう歪んだ形になってしまったのか? 広告で仕事をしている人もアートで仕事をしている人も、お互いにわかりあえて、アートの力で既存の広告にない表現が生まれ、広告を使って、アートが新たなスキームを獲得できるんじゃないか?」

アート
坪倉輝明のインタラクティブ作品『つくもがみ』。人の動きをキネティックセンサーでキャッチ、画面に反映する
【写真:川口友万】

 そこで両者をぶつけてみようと選んだのがメディアアート。

「メディアアートは、チームラボさんにしてもライゾマティックス(パフュームのPVや舞台が有名)さんにしても、広告の文脈でやっています。

 ファインアートの立場でメディアアートでやっている人もいます。ファインアートと広告は交わりそうで交わらない。でも広告として作品を作っている」

 広告のクリエイティブ、あるいはファインアートからスタートして商業広告を手掛けている、そういう人たちにメディアアートを作ってもらおうというのが今回の試みだ。

 メディアアートとは? と問われたクリエイターの出した答えは、まさに狙い通り。たとえばグーグルマップのストリートビューと連動し、専用アプリに地名を入れるとその場所が表示され、スマフォの位置センサを使ってストリートビューの中を移動する。

 こういうインタラクティブで、広告にも使えるがアートとしても成立するという作品は、両者の境界線で仕事をしているからこそ生まれる発想だろう。

 5月14日(土)14時からはイタリアンのシェフを招き、『食 × テクノロジー 次世代体験「不思議の酒場」』(1500円:ワンドリンク&小品付)も行われる。

 メディアアートという、つかみどころのないアートを広告のノウハウで現在に落とし込んだ力作、ぜひ体験してほしい。

「CreativeAdventure」
期間:2016 年5 月15 日(日)まで 12:00~22:00
会場:ARTnSHELTER 〒140-0011 東京都品川区東大井1丁目19?10
入場料:無料(イベント開催時一部有料)

取材・文 川口 友万

【了】

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