サッカー・Jリーグを丸裸 統計学が突きつける、いびつなチャンピオン争いの実態

昨季より導入されたJリーグの2ステージ制。長く浸透した1ステージ制からの変更は大きな批判を呼んだ。統計学を用いた分析が、2ステージ制の実態を明らかにする。

山下祐司| Photo by Getty Images

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Jリーグのチャンピオンを争うにふさわしい制度か

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年間優勝チームにはこの優勝銀皿と賞金1億円が贈られる
【写真:Getty Images】

 とはいえ、こうも考えられないだろうか。2ステージ制がそれこそスポンサー収入と観客数の増加を目的としているので、その目的を達成しつつ年間勝点が高いチームがCSのタイトルをより獲得しやすい制度設計を、Jリーグがあえて「選んでいる」のではないか。

 まさに今年の変更点は“リーグ戦成績上位チームの優位の一貫性を確保することを目的”としてCSのシード順位で、年間勝点の2位3位のチームが各ステージ優勝チームより優遇されるようになった。

 しかし、「目的達成の利点と、年間勝点の上位3チームと各ステージ優勝を並立させる方式が生み出す問題とが、うまくバランスされているようにはみえません」と小中准教授は話す。

「特に各ステージの優勝チームはタイトルの獲得を表彰されますが、年間勝点が1位のチームはCS決勝で負けてしまうとタイトルを手にできない。

 メジャーリーグはポストシーズン制を確かに採用していますが、年間勝点1位のようなチームをしっかりとタイトルチームとして認めています。この差も大きい」

 JリーグのCSが実は、2ステージ制の影響は大きくはなく、実質1シーズン制の勝点上位3チームがCSで争っているようなもので、その確率は61.7%と高い。それならば……。

「私が選ぶなら1シーズン制。各ステージ優勝チームの有利にする2ステージ制をへてCSを実施してややこしくするより、シンプルに年間勝点1位のチームをたたえたいですね。

 ただ、ポストシーズンの盛り上がりも素晴らしいものなので、採用されるのであれば矛盾無くすっきりした制度設計を期待します」(小中准教授)

 現行の2ステージ制の「実態」は『年間勝点で4位以下のチームをステージ優勝で救済』し、年間優勝チームをCSで争う制度だということが、具体的な数値で明らかになった。

 はたして、この制度はJリーグのチャンピオンを争うにふさわしいのか。小中准教授らの統計学的な分析はもっとも根本的な問題を突きつけている。
 
※記事内の図、表は泉武志、小中英嗣「J1リーグ2ステージ+ポストシーズン制度の統計的分析」をもとに作製。

プロフィール
小中英嗣(こなかえいじ)
名古屋大学大学院博士後期課程電子情報学専攻修了。工学博士。名城大学理工学部准教授。専門分野はシステム理論、制御理論(特に、ハイブリッドシステム論とその応用)。

取材・文 山下 祐司

【了】

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