米国で相次ぐ警官の黒人射殺 狙われるリスクは白人の最大22倍
米国警官は黒人を「狙う」。米・カリフォルニア大学デービス校のコディ・ロス博士が昨年の11月に発表した推計をみると深刻な問題が明らかになる。
スポンサーリンク適切に公開されない発砲の記録
銃を持たない黒人が警官に撃たれるリスクを白人と比較した図 色が濃い地域ほど黒人のリスクが高い
【Cody T. Ross A Multi-Level Bayesian Analysis of Racial Bias in Police Shootings at the County-Level in the United States, 2011-2014より抜粋】
警官から黒人への発砲が最も酷いのは、マイアミ市があるフロリダ州マイアミ・デイド郡で22.88倍と圧倒的に高い。
大都市でもロサンゼル市を含むカリフォルニア州ロサンゼルス郡で10.21、そしてニューオリンズ市のあるルイジアナ州オーリング郡も9.29倍だ。一方、ニューヨーク市のあるブロンクス郡は2.95倍で全体の平均値よりは低い。
ヒスパニックの撃たれるリスクは白人よりも高いが黒人ほどではない。銃を持たないヒスパニックが警官に発砲されるリスクは、同じく銃を持たない白人の1.67倍にとどまっている。
もっともヒスパニックの「狙われやすい」のはカリフォルニア州ロサンゼルス郡で白人の5.11倍だ。
銃を持たない黒人が警官に撃たれるリスクは白人の1~22倍と地域によってこれほど大きな差が生じている。事態をもっと深刻にしているのは、警官が人を撃った記録が適切に公開されていないことだ。
コディ・ロス博士が指摘するのは、例えば、連邦捜査局が発表しているデータは事件の詳細が記されていない。また警官が発砲したすべてのケースが登録されず、一部を選んで登録している状態だという。そして、フロリダ、アラバマ、イリノイの各州はデータを全く提供していない。
この研究で用いたのは編集者のカイル・ワグナー氏がはじめたUSPSD (the U.S. Police-Shooting Database ) の2011年から2014年のデータ。ここには撃たれた人の名前や人種、民族などの詳細が登録されているが完全なものではない。
今回の推計値はあくまで大まかなもので、信頼性の低い地域もあると博士は明らかにしている。しかし、米国の警官がいかに白人に比べ黒人やヒスパニックに銃を向け、発砲しているか内実を示す重要な報告に違いない。
【参考】
Cody T. Ross A Multi-Level Bayesian Analysis of Racial Bias in Police Shootings at the County-Level in the United States, 2011-2014
取材・文 山下 祐司
【了】