「日本の伝統食こそ理想の食事」と称賛する、ある報告書に隠された不都合な真実!

我が国の文化が世界で認められるのは間違いなく喜ばしい。しかし、そこに根拠は本当にあるのか。米国会に提出された日本食文化が称賛されているという報告書の中身を紐解くと……

ロッポンギ ヒロユキ| Photo by Getty Images

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日本生まれ、アメリカリメイクは失敗する?

和食
セレブが愛好したマクロビ
【写真:Getty Images】

 では、だれがこんなありもしない話を広めたのか? 

 実は「マクガバン・レポート」の和食推し説を主張する人の多くが、マクロビオティック(マクロビ)の信奉者なのです。

 マクロビオティックとは、陰陽思想をベースとした食生活運動で、玄米や雑穀、全粒粉の小麦製品などを主食とし、有機農法などの野菜や豆類、海藻類が料理の中心となります。肉をはじめ、砂糖や牛乳、卵、コーヒーなどは避けるべきとされています。

 このマクロビは、第二次大戦の前後に桜沢如一氏が創始したもので、戦後に渡米した弟子の久司道夫氏が中心となってアメリカで普及を図り、折からのヒッピームーブメントや禅ブームもあって次第に定着したといいます。

 そして、マドンナやトム・クルーズなどのセレブが愛好するようになり、日本でも本格的なブームが到来したという、いわばハリウッドリメイクの日本再上陸みたいなものといっていいでしょう。

 このマクロビ信奉者の間では、「マクガバン・レポート」の作成にマクロビの思想が大きな影響を与えたらしいのですが、文中に「マクロビ」という単語はどこにも出てきません。

 そしていつの間にか「元禄以前」の言説が登場してきます。

 このガセネタを世の中に吹聴して回った人物が新谷弘実氏。

 日本の医大を卒業後、アメリカに渡って内視鏡医療の第一人者と呼ばれるようになった人物ですが、乳製品や動物性たんぱく質が老化のリスクを高めるという主張は、マクロビとも共通しています。200万部も売れたという彼の著書『病気にならない生き方』には、

「『マクガバン・レポート』は、こうした当時の食事の常識を真っ向から否定しました。そして、もっとも理想的な食事と定義したのは、なんと元禄時代以前の日本の食事でした。

 それは、精白しない穀類を主食に、おかずは季節の野菜や海藻類、動物性タンパク質は小さな魚介類を少量といったものです」

 と書かれています。新谷先生、いったいどこからこのネタ拾ってきたんでしょう? もう説明の必要はないかもしれませんが、大事なことなのでもう一度書きます、「んなこたあない!」、と。

 それにしてもなんでこうも、日本生まれのアメリカ育ちみたいなのが集まっちゃうんでしょうか。やっぱり『攻殻機動隊』も、『ドラゴンボール』や『北斗の拳』みたいになってしまうのか。何かの祟りと違いますか?

 ちなみにハリウッドで最初に実写化された日本の漫画と言われる『強殖装甲ガイバー』は、第一作目に『スターウォーズ』ルーク役のマーク・ハミルが出ていたのにまったく話題にならなりませんでした。

 ま、原作自体、連載開始から30年を過ぎてもまだ終わる気配はありません。これもまた何かの呪いなんでしょうか?

【参考】
https://archive.org/details/CAT78698154

取材・文 ロッポンギヒロユキ

【了】

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