【食べる科学実験】なぜ人はラーメン二郎に並ぶのか? 魅入られる謎を科学で解明

開店前から閉店まで延々と途切れることなく人が並ぶ謎のラーメン屋「ラーメン二郎」。その何がそれほど人を熱狂させるのか? 

川口友万| Photo by Tomokazu Kawaguchi|シリーズ:食べる科学実験

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ラーメン二郎のサイエンス

二郎
「コクと旨味の秘密」(伏木亨・新潮新書)
【写真提供:新潮新書】

 味の専門家の本を読み漁り、一番わかりやすく説明されていたのが京都大学農学研究科教授・伏木亨先生の著作だった。

 伏木先生の研究によれば、脂肪を食べた時、脳の報酬系が興奮するそうだ。報酬系というのは、気持ちいい感じのこと。

 おいしいものを食べると気分が良くなるが、あれは麻薬と同じ脳の回路=報酬系が使われるためだ。

 おいしいものを食べるとβエンドルフィンが脳内に発生、ケシ(=モルヒネまたはヘロイン)の受容体であるオピオイド受容体に作用しておいしいと感じる。

 うす~く麻薬を吸っているようなもので、おいしいには麻薬と同じ作用がある。

 さらにもっと食べたいという欲求は覚せい剤の受容体であるドーパミン受容体が受け持っている。いわゆる“やみつき”になるのはドーパミンの働きだ。

 ドーパミンが食べたいという衝動を生み出し、食べればβエンドルフィンによって幸せになる。

 伏木先生はマウスにコーン油を与える実験を行った。レバーを押すとコーン油が出るようにした給餌機を使い、レバーを数回押して初めてコーン油が出るようにする。

 その回数をどんどん増やす。100回になっても200回になっても、マウスはレバーを押し続ける。それこそ狂ったように、だ。

<ケーキやパンやラーメンに並ぶ行列の長さと、マウスに課されたレバー押しの回数とはよく似ています>
<列の長さは並ぶ人の期待度を表しています>(新潮新書「コクと旨味の秘密」)

 ところが、コーン油に慣れたマウスにオピオイド受容体をブロックする薬を与えるとどうなるか? 油にまるで興味を示さなくなるのだ。

 ドーパミンの放出を抑えるドーパミンD1ブロッカーという薬品を投与すると“やみつき”は消失した。

まさに麻薬だ。

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