「開催するならコストを削れ!」望めない? オリンピックの経済効果 

新国立競技場の建設や大会運営費の増大ばかりが話題になる東京オリンピック・パラリンピック。その莫大な費用に釣り合う“見返り”は期待できるのかーー。

山下祐司| Photo by Getty Images

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「生活水準を押し上げる明確な効果はみられません」

オリンピック
目覚ましい日本人選手の活躍が記憶に残る、冬季・長野オリンピック
【写真:Getty Images】

 佐々木教授たちは長野オリンピックの開催が決まった1991年を分岐点に、1991年から2009年までのGDPを比較した。1991年はオリンピックの開催に向けて具体的に動きはじめた年にあたる。

 仮想長野県の動向は、オリンピック決定前の1985年から90年までの長野県の経済動向と、長野県をのぞくオリンピックが開かれていない46都道府県の経済データをもとに試算した。

 長野オリンピックの効果はいかほどかーー。

 18年間にわたって調べると、93年から94年に仮想長野県のGDPを実際の長野県のGDPが越え、以降はオリンピックを開催した長野県のGDPが高いままだった。

 しかし、ひとり当たりのGDPに換算すると話は変わる。実際の長野県と仮想長野県とに明らかな違いはみられなかった。

「オリンピックのおかげで長野県全体のGDPは増えましたが、県民ひとりひとりの生活水準を押し上げる明確な効果はみられません。

 ですからオリンピックのおかげで地域経済が発展して、諸手をあげて喜ぶ。そうはうまくいかなかったわけです」と佐々木教授は説明する。

 特に1991年から1998年の長野市の借金である市債残高643億から1926億円に急上昇、つまり7年間で1283億円増えた。

 現在でも1407億円残っている状況。不景気や高齢化による影響もあるが、オリンピックの負の効果は大きい。佐々木教授は語る。

「世界各国の研究でもオリンピックの経済効果に懐疑的な結果も多く、あっても小さい影響です。

 いずれにせよ、開催するならコストを下げるしかない。長野オリンピックではアリーナやジャンプ台など新設して大きな借金を抱えました。

 ここから学ぶことはあるはず。特別なことは何も言っていません」

取材・文 山下 祐司

【了】

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