暑いか、寒いか、ハッキリしろ! 温暖化する地球に小氷河期、襲来!

「2030年に小氷河期が訪れるだろう」。昨年のイギリス天文学会でのショッキングな発表は、果たして現実になるのだろうか?そのとき我々はどうなる?

工樂真澄| Photo by Getty Images

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氷河期に何があったのか

氷河期
凍りついたテムズ川で遊ぶ人々
【画像:The Frozen Thames, looking Eastwards towards Old London Bridge by Abraham Hondius, 1677 c Museum of London】

 樹木の年輪に含まれる放射性同位元素の測定などから、地球には何度か温度が低い時期があったことがわかっている。

 中世にはそのような期間が続き、中でも17世紀の「マウンダー極小期」に関して、詳細な記録が残っている。

 この時期には太陽の黒点がほとんど現れず、冷夏が続いた。気温はその前後の平均気温よりも0.2度ほど低かっただけのようだが、その極寒の様子は当時の絵画が物語っている。

 完全に凍りついたロンドンのテムズ川の上で、人々が氷遊びに興じている様子が生き生きと描かれている。

 最近Nature Geoscienceに、中世よりさらに前の小氷河期についての論文が掲載された。
 
 ビュントゲン博士らの解析によれば、西暦536年から660年は「古代末期小氷期」と認められ、1990年代頃の気温に比べて2度ほど低かったという。

 注目すべきはこの小氷河期が、社会情勢の混乱した時期と不気味な一致を見せていることだ。

 この当時のヨーロッパは、かの大帝「ユスティニアヌス」率いる東ローマ帝国時代に当たる。

 542年から543年には歴史的疫病である「ユスティニアヌスのペスト」が猛威を振るい、何千万もの人々が犠牲となった。

 またアジアでは長い分裂時代に終止符を打った隋王朝が、相次ぐ反乱と群雄割拠により滅びる運命をたどった。

 日本に目を向ければ蘇我氏、物部氏など豪族の争いが激化する政治の混乱期に当たり、聖徳太子が活躍した時代でもある。645年に迎えた大化の改新が、新しい国家の幕開けとなった。

 単なる偶然か、不気味な一致か。極端な寒さが人々のストレスになったことは間違いないだろう。

 寒さゆえに疫病を招く、また農作物の不作が食糧事情に反映して民衆の怒りを増長したであろうことは想像に難くない。小氷期が社会に与える影響は決して少なくないだろう。

 では果たして2030年に来るとされる小氷期は、悪化する一方の地球の温暖化を食い止められるのか?

 あるデータでは小氷期の気温低下は0.3度ほどにとどまるのに対して、温室効果によって2100年までに気温は5度前後まで上昇するとされる。地球温暖化の速度のほうがよっぽど速いというわけだ。

 また実際のところ、中世に小氷期が訪れたのは北半球の限局された地域だけで、地球規模で起こったわけではないと考えられている。

 太陽活動の低下による小氷期といっても、熱くなる一方の地球には焼け石に水といったところか。答えはこれから十数年後に、自ずと明らかになるはずだ。

【参考文献】
Principal Component Analysis of Background and Sunspot Magnetic Field Variations during Solar Cycles 21-23, Zharkova, V. et al. MNRAS, 424, 2943, 2012, http://adsabs.harvard.edu/abs/2012MNRAS.424.2943Z
Cooling and societal change during the Late Antique Little Ice Age from 536 to around 660 AD Buntgen U. et al. Nature Geoscience doi:10.1038/ngeo2652, 08 Feb. 2016

取材・文 工樂 真澄

【了】

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