科学がデッカイ! 驚くべき構造物の美『日本の現場 立入禁止の向こう側』展
想像を超える巨大な美。合理性を突き詰めた先にある洗練。科学の現場が生んだ芸術を写真家が発見する。そんな写真展が東京・新宿で開催中だ。
スポンサーリンク私たちが住んでいる世界の、私たちの入れない場所
実際に現場に行くと、思っていたものとは違うことがある。
工場というと人がたくさん働いているイメージがあるが、今や無人工場も珍しくない。鉄工所で鉄鉱石を溶鉱炉へと運ぶのも、無人操作の重機だ。
溶鉱炉も炉に扉があるわけではなく、粘土で塞いで鉄を溶かし、粘土を崩すと溶けた鉄が流れ出す。
「一回一回、穴を開けて、その後、粘土を詰めるんです。粘土を詰める機械もある。3時間ごとに出す穴を変えて、順番に出すんです」
タンカーの取材では、エンジンとスクリューが直結していることを初めて知った。
「大きな船なのにスクリューが1個しかなくて、車のような変速機があるのかと思っていたらない。エンジンから直結で駆動される」
常識だと思っていたことが、現場に行くとひっくり返されると西澤氏。
「ホントはこんな風になっていたんだと知るのは撮影の喜びで、現場で働いている方の話を聞くのが大好きなんです」
西澤 丞
写真家。1967年、愛知県生まれ。群馬県在住。自動車メーカーデザイン室、撮影プロダクション勤務を経て2000年に独立。科学や工業、インフラなど「日本の現場」をテーマに撮影中。写真集『イプシロン・ザ・ロケット ―新型固体燃料ロケット、誕生の瞬間』(2013年)など多数
【掲載写真はすべて西澤丞氏提供による】
撮影が面倒なこうした写真をどうして撮ろうと思ったのだろう?
「工事現場を見たのが最初です。東京の地下工事を見たのが最初です。地上では普通に人が歩いているにも関わらず、地下へ行くと巨大なトンネル工事をしている。
上を歩いている人が誰も知らないところで大工事が行われている、そのギャップですね。そのギャップをつなぐ人間がいてもいいんじゃないかなと思ったのがきっかけです」
写真家の目が切り出した、ダイナミックな“見ることが許されない”科学の美を覗いて欲しい。
『日本の現場 立入禁止の向こう側』展
会期:3月2日~31日
会場:コニカミノルタプラザ
〒160-0022
東京都新宿区新宿3-26-11 新宿高野ビル4F
開館時間 10:30~19:00(最終日は15:00まで)
取材・文 川口 友万
【了】